練習試合 恋風VS円帝2
立ち上がり、先にシュートをしてきたのは円帝でスピーディーなパス回しからフィニッシュまで持ってきてしまう。
2軍とは思えないぐらいに上手いし速い!
これ僕が仮に入れたとしても、ついて行けるのかな……。
「焦らず、出来る限り素早くボールを中盤で回して!」
僕は飲み物やタオルを用意しながらも、フィールドの選手達に向けて声を掛け続けた。
「あっ!」
すると大島先輩から右の莉音先輩へパスが出た時、相手がパスコースに飛び込んでカットされる。
カウンターのピンチだとなって思わず声が出てしまう。
カットした選手は右足でボールを蹴ると、弧を描く感じで浮き上がったパスがDFとGKの間に落としてきた。
そこのスペースを突いて来て、相手FWが迫る。
ヤバい、守華先輩と1対1になっちゃうよ!
「行かせない……!」
「っ!?」
急に現れた月夜先輩が相手へ寄せて来て、1度キーパーにボールを軽く転がすと守華先輩は大きく蹴り出してクリア。
無事にピンチを凌いでみせた。
「月夜先輩ナイスー!」
今のは月夜先輩のファインプレーなので、忘れずに声を掛ける。
こういうDFの存在は凄く大事だから。
月夜Side
今……私、褒められた……?
ふ、フフフフ……嬉しい……!愛しい神兎君に褒められると、よりDFの仕事が楽しく感じる……!
昔から背が高いから……という理由でCBだったけど、今日が1番楽しい……!
神兎君に褒められるなら……あの子が私に注目してくれるなら……どんなスーパープレーだってやってみせる……!
それで私が神兎君を独占して、家に連れて帰ったりしたら……フフフフ……!!
だったら……もっと彼に見てもらう為に……褒められる為に……相手にはゴールなんかさせない……
私という壁を前に得点は許さない……守華に良い所も見せないから……キーパーの好セーブとか守りの中で特に注目されちゃう……
そうなったら守華が神兎君と……!?
絶対に許さない……!!
この女には活躍させないようにしよう……!
燐火Side
ちっ、何やってんだ前線の連中は。
すぐに点が取れるかと思えば意外にも恋風の奴らが粘って来やがるのか、それとも攻撃陣がたまたま絶不調なのか?
どっちにしてもスコアレスが続くなんて考えてなかった。
「オラー! もっと厳しく寄せろ! チェック甘いぞー!」
相手の7番や8番に結構抜かれたりして、あたしは情けねぇなと思いながらも味方に声を掛けていく。
今も8番が左サイドから迫りやがるし、今度はクロスを上げずにドリブルで切り込んで来る。
円帝を相手に単独で切り込んで来るだ?舐めてんじゃねぇぞ!
すぐに三柴、八坂の2人がかりで取り囲む。
舐めたマネしやがって、ざまぁみろ。
そう思っていたら、取り囲まれていた8番が器用に2人の間を抜くパスをかましてきやがった!
「くっ!?」
銀髪デカ女が反応するけど、あたしの方が素早く蹴り出してクリアする。
ったく、ヒヤッとさせやがって!
間違っても円帝が先にゴールを許す、なんて事はあり得ねぇ。
あたしがゴール前にいるのに、雑魚共へ点をやる訳ねぇだろ。
この試合は1軍にのし上がる為のアピールの場、恋風はただの踏み台にしか過ぎねぇんだ。
「まずは先制点だ先制点! 前半の内に取っちまえ!」
前半の内にゴールが欲しいから、あたしは味方に向かって叫ぶ。
これで負けて神兎に弱いとか思われたら、てめぇらどうしてくれんだ!?
芹華Side
意外と言えば彼らに失礼だが、恋風は私の想定よりも良い動きをしてくる。
特にGKとCBの6番、ボランチの1人である10番、左右のサイドにいる7番と8番。
彼女達がチームを支える要なのだろう。
「……芹華、準備しておきなさい」
「監督? しかし私は……」
その時、母である監督が私に準備するように声を掛けてきた。
「あなたも気づいているでしょう。彼女達が想像よりも強いと」
母は私の心を見透かすように言う。
「たとえ練習試合とはいえ、円帝に負けは許されません」
「はい、監督」
どうやら恋風を強敵と見て、私も出た方が良いと判断したらしい。
その証拠に我が円帝は攻め込んでいるものの、決定的なシュートにまで行く事が出来ていなかった。
積極的にミドルレンジからのシュートは出来ているが、全て相手GKにほぼ正面で取られてしまう。
一見すれば正面へ飛んでしまってるように見えるが、あのGKはさり気なくサイドステップで移動し、キャッチしやすいポジショニングをとっている。
そういえば何処が見覚えあるが、何処でだったか……?
まあいい、とにかく私のするべき事は出場に向けての準備を進める事。
出場となれば、小平君へ私のプレーする姿を間近で見せてあげられる。
そこから自然と交際へ繋がれば完璧、その為には守神家の者として恥じないプレーと振る舞いを心掛けなければ。
アップを行いつつフィールドで行われる試合は我が円帝が優勢で押している。
しかし点が動かない焦りからか、円帝のリズムが狂い始めてしまうのが見ていて感じた。
このまま前半は0ー0で終了し、私はジャージを脱いで背番号10のユニフォーム姿となる。
此処から本当の円帝サッカーを見せよう。
そこから彼を必ず惹かれさせて……!!
……いかんいかん、邪な気持ちがつい出てしまった。




