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【民法が学べる!?】一話完結☆小説で学べるやさしい民法  作者: 根立真先


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6/6

制限行為能力:未成年

【登場人物】

・父

・小学生の息子

・店員



~物語スタート~



「お父さん、これ買ってくれない?」


 小学五年生の太郎は、量販店で見つけたゲーム機に目を輝かせて父親に頼み込んだ。


「ごめんね、太郎。今月はお金が厳しいから無理だよ」


 父親は苦笑しながら答えた。

 太郎は知的障害があり、事理弁識(じりべんしき)能力が著しく不十分だった。

 そのため、太郎は被保佐人として家庭裁判所から保佐(ほさ)開始の審判を受けており、父親が保佐人となっていた。


「でもお父さん、これすごく楽しそうだよ。友達もみんな持ってるし」


 太郎はしつこく食い下がった。


「だからダメだって言ってるじゃないか。お父さんの言うことを聞きなさい」


 父親は厳しく言いつけた。

 太郎はふてくされてしまった。

 そのとき、スーパーの店員が近づいてきた。


「すみません、お客様。このゲーム機、今日だけ特別価格で販売しています。もしよろしければ、お子様にプレゼントしてはいかがでしょうか?」


 店員はにこやかに言った。


「え?本当ですか?」


 太郎は目を輝かせた。


「本当ですよ。でも、在庫があと一台しかないんです。早い者勝ちですよ」


 店員はさらに煽った。


「お父さん、お願い!買って!」


 太郎は父親の腕を引っ張った。


「いや、だから無理だって。この人の言うことにだまされないで」


 父親は店員に不信感を抱いた。

 このゲーム機は市場価格よりも高く売られていることに気づいていた。


「だましているわけじゃありませんよ。これは本当にお得なチャンスなんです。ほら、お子様も喜んでいますよ」


 店員は太郎にゲーム機を手渡した。


「わーい!ありがとう!」


 太郎は喜んで受け取った。


「ちょっと待ってください!」


 父親は慌てて取り上げようとしたが、店員が邪魔をした。


「すみません、もう契約成立ですよ。お子様が自分の意思で購入されましたから」


 店員は得意げに言った。


「契約成立?何を言ってるんですか?この子は制限行為能力者なんですよ。私の同意なしに契約なんてできません」


 父親は怒りをあらわにした。


「制限行為能力者?そんなこと初めて聞きましたよ。証拠はありますか?」


 店員は冷静に言った。


「証拠?そんなもの持ち歩いてませんよ。でも、本当ですから」


 父親は困惑した。


「本当だとしても、私は知りませんでしたから。それに、このゲーム機は日常生活に関する行為ですから、制限行為能力者でも単独でできるはずですよ」


 店員は法律的な知識をひけらかした。


「日常生活に関する行為?そんなことありませんよ。これは重要な財産行為ですから、私の同意が必要です」


 父親は反論した。


「重要な財産行為?このゲーム機の値段は1万円ですよ。それが重要だと思いますか?」

 店員は嘲笑した。

「1万円?市場価格の半分以下じゃないですか。それに、この子の小遣いも1万円あるそうですよ」

 店員は太郎に聞いた。


「そうだよ。お父さんが毎月くれるんだ」


 太郎は無邪気に答えた。


「見ましたか?この子にとって1万円なんて大した金額じゃないんです。だから日常生活に関する行為と言えるでしょう」


 店員は自信満々に言った。


「そんなことありませんよ。この子の判断能力は普通の子とは違うんです。このゲーム機の価値や必要性を理解できていないんです。それに、この子の小遣いは私が管理しているんですから、自分で使えるわけがありません」


 父親は必死に説明した。


「そうですか?でも、それを証明できるものはありませんよね。私はこの子が普通の子だと思って接していましたし、この子も自分でゲーム機を欲しいと言ってくれました。それが詐術だと言うのですか?」


 店員は父親を責めた。


「詐術?そんなことありませんよ。この子は嘘をつくつもりなんてなかったんです。ただ、あなたの言葉にだまされてしまっただけなんです」


 父親は憤った。


「だまされた?私は何も嘘をついていませんよ。このゲーム機は本当に今日だけ特別価格で販売していますし、在庫もあと一台しかありません。それに、この子が楽しそうにしているのを見て、喜ばせてあげたかっただけなんです」


 店員は正当化した。


「そういうことじゃないんです。あなたはこの子の心理を利用して、無理やり契約させようとしたんです。それが詐術(さじゅつ)なんです」


 父親は主張した。


「詐術だとしても、私は制限行為能力者であることを知らなかったのですから、無効にはなりませんよ。民法18条2項によれば、制限行為能力者が詐術によって相手方をだました場合でも、相手方が制限行為能力者であることを知らなかったときは、その行為を取り消すことができないとされています」


 店員は法律的な根拠を示した。


「民法18条2項?そんな条文はありませんよ。あなたが言っているのは旧民法の条文です。2018年7月23日から施行された改正民法では、その条文は削除されました。今では制限行為能力者が詐術によって相手方をだました場合には、相手方が制限行為能力者であることを知らなくても、その行為を取り消すことができます」


 父親は新しい法律の知識をひけらかした。


「え?そうなの?」


 店員は驚いた。


「そうですよ。あなたは古い法律に基づいて話しています。今では制限行為能力者の保護が強化されています。だから、この契約は取り消します」


 父親は断言した。


「ちょっと待ってください!それじゃあ私はどうなるんですか?このゲーム機を返品するわけにもいきませんよ」


 店員は困惑した。


「それはあなたの責任です。あなたは制限行為能力者であることを確認しなかったし、詐術によって契約させようとしたんですから。それに、このゲーム機は市場価格よりも高く売っているんですよね。それも不当だと思います」


 父親は非難した。


「そんなことありませんよ。これは市場価格と同じですよ。それに、詐術なんてしていませんよ。私は正直に話していただけです」


 店員は弁解した。


「正直に話しているなら、なぜこの子にゲーム機を手渡したんですか?それは契約成立の意思表示だと思わせる行為ですよ。それに、この子が制限行為能力者であることを知らなかったと言っても、見ればわかるでしょう。この子は知的障害があるんですから」


 父親は論破した。


「そうですか?でも、私は本当に知りませんでしたよ。この子は普通の子に見えましたし、自分でゲーム機を欲しいと言ってくれましたから。それが制限行為能力者だと言うのですか?」


 店員は最後の抵抗をした。


「そうです。この子は制限行為能力者なんです。だから、この契約は無効です。これ以上言っても無駄ですよ。さあ、ゲーム機を返させてください」


 父親は強く言った。


「お父さん、ごめんね」


 太郎は泣きながらゲーム機を手放した。


「いいよ、太郎。お父さんのせいだよ。こんな人にだまされないでね」


 父親は太郎を抱きしめた。


「ふん、しょうがない。じゃあ、これで終わりにしましょう」


 店員は仕方なくゲーム機を受け取った。


「終わりじゃありませんよ。あなたは詐術によって契約させようとしたんですから、罰せられるべきです。私は消費者センターに相談しますし、必要なら訴えます」


 父親は警告した。


「え?そんなことしないでくださいよ。私も生活がありますから」


 店員は慌てた。


「それはあなたの問題です。私も生活がありますから。それに、この子の気持ちを考えてください。この子はあなたに騙されて傷ついたんですよ」


 父親は感情的に言った。


「そうですか?でも、私も悪気はありませんでしたよ。ただ、売上を上げるために頑張っていただけです」


 店員は弁明した。


「売上を上げるために詐術をするのが正しいと思いますか?それが商売だと思いますか?あなたは本当に反省していますか?」


 父親は問い詰めた。


「......」


 店員は黙ってしまった。

当作品をお読みいただきまして誠にありがとうございます。

面白かったら感想・評価・いいね・ブクマ・レビュー等していただけますと大変励みになります。

気に入っていただけましたら今後とも引き続きお付き合いくだされば幸いです。

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