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【民法が学べる!?】一話完結☆小説で学べるやさしい民法  作者: 根立真先


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制限行為能力:成年後見制度(せいねんこうけんせいど)

【登場人物】

・年老いた父

・成年の息子



~物語スタート~



「お父さん、今日はどこに行くの?」


「え? ああ、そうだな。ちょっと用事があるんだよ」


「用事って何?」


「それはね......」


 父は言葉を濁した。

 息子の質問に答えるのが嫌だったからではない。

 答えられなかったからだ。


 父は自分が何のために家を出るのか、よくわからなかった。

 ただ、どこかに行かなければならないという感覚があった。


 父は認知症だった。

 数年前から徐々に記憶や判断力が衰えていき、とうとう日常生活にも支障をきたすようになった。

 母はすでに他界しており、息子は遠く離れた場所で仕事をしていた。

 父は一人暮らしをしていたが、近所の人やヘルパーの方々の目が届かないときもあった。

 そのときには、父は無意識に外出してしまうことがあった。


 息子は心配していた。

 父が道に迷ってしまったり、危険な目に遭ったりしないだろうか。

 父が不当な契約を結んでしまったり、財産を失ってしまわないだろうか。

 父の意思能力や判断能力が低下していることは明らかだったが、父は自分の状態を認めようとしなかった。

 息子は父に任意後見契約を結ぼうと提案したこともあったが、父は拒否した。


 息子は法的な手段を取ることを考え始めた。

 父の保護のために、成年後見制度を利用することだ。


 成年後見制度とは、判断能力や意思能力が低下した人(成年被後見人等)の財産管理や生活支援をする人(成年後見人等)を家庭裁判所が選任する制度だ。

 成年後見制度には、後見(こうけん)保佐(ほさ)補助(ほじょ)の3つの類型があり、それぞれ対象者や権限に違いがある。


 息子は父について「保佐」の申立てをすることにした。

「保佐」の対象者は、判断能力が著しく不十分な人である。

 保佐人は、借金や相続の承認、家の新築や増改築など特定の事項について同意権や取消権・代理権を持つ。

 息子は自分が保佐人になり、父の財産管理や生活支援を行おうと思っていた。


 しかし、息子は一つの問題に直面した。

 それは、欠格条項だった。


 欠格条項とは、成年被後見人や被保佐人となった場合に一定の資格や職業を失うこととされている条項だ。

 欠格条項は、医師や弁護士などの資格や公務員や会社役員などの職業に関するものが多く、多くの法令に設けられていた。


 父は元医師だった。

 父は認知症になる前は、地域の診療所で長年にわたり医療に携わっていた。

 父は医師としての自分に誇りを持っていたし、周囲からも尊敬されていた。

 息子は父が医師の資格を失うことに抵抗を感じた。

 父の人格や尊厳を傷つけることにならないだろうか。

 父が保佐の対象となった場合、その資格や地位を失うこととされている欠格条項が適用されるのだ。


 息子は悩んだ。

 父の保護のためには成年後見制度を利用するべきだが、父の資格や地位を奪うことはできない。

 そんなとき、息子はあるニュースを目にした。

 それは、成年後見制度の改正に関するニュースだった。


 2019年6月に成年後見制度の一部が改正されたというのだ。

 その改正のポイントは、欠格条項を原則として一括削除することだった。

 欠格条項は、成年被後見人や被保佐人の人権侵害や差別を助長するものであり、成年後見制度の利用を妨げるものであるという批判があったからだ。

 改正法案は2019年6月に成立し、2020年4月1日から施行されることになっていた。


 息子は驚いた。

 これはまさに朗報だった。

 欠格条項が削除されれば、父が保佐の対象となっても医師の資格や地位を失うことはない。

 息子は改正法施行後に保佐の申立てをすることを決めた。

 そして、その日まで父の安全や財産を守ることを誓った。


「お父さん、今日はどこに行くの?」


「え? ああ、そうだな。ちょっと用事があるんだよ。」


「用事って何?」


「それはね......」


 息子は父に優しく微笑んだ。


「お父さん、今日は一緒に散歩しようよ。きれいな花が咲いてるよ」


「そうか? じゃあ、行ってみようかな」


 父は息子の手を握った。

 息子は父の手を握り返した。

当作品をお読みいただきまして誠にありがとうございます。

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気に入っていただけましたら今後とも引き続きお付き合いくだされば幸いです。

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