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deux

  前途有望の局員 オルテンシア様


 何時もお気遣いをありがとうございます。折にふれて私に手紙を書いてくださったのですが、これが最初で最後のお返事になってしまい、申し訳無く思います。


 恥ずかしがり屋の貴女(あなた)のことですから、きっとひとりになれる場所で読んでいらっしゃるのでしょう。例えば……心癒魔術局の屋上でしょうか(当たっていますか?)。


 貴女が私を慕ってくださっていることは、局長に就いて三年間、充分に伝わっていました。魔術師の家系ではなく、また、これといった強力な魔法を持っていなかった私を「理想の心癒魔術師」だと仰っていましたね。「唯一、心癒魔術の基礎を極めた魔術師」とも。当時は気難しい顔で聞いておりましたが、心の内では翼が生えたかのように嬉しかったのですよ。尊敬する貴女に、褒めてもらえたのですから。


 貴女は困っている方々に対して、分け隔てなく魔法をかけていましたね。時に難易度の高い魔術に挑まれ、多くの方々を救っていたところを、私は見ていました。癒しを求めている人々のため迅速に動いている貴女は、若き日の私によく似ています。


 ある程度歳を重ねると、臆病になってしまうものだと最近実感しました。私が動いたところで何ができるのか。私の魔術を目にして「期待外れだ」と失望されるかもしれない。年寄りに癒されることを屈辱に思う方々もいるでしょう。


 局長席で縮こまっていた私を、再び奮い立たせてくださったのは、貴女なのです。物静かな貴女は、心に熱を秘めていました。必ずや傷ついた心を救う、強い意志を。


 退職し故郷へ帰り、積み重ねていた魔術書を読む毎日は寂しいものです。ここで私は、天に届く塔へ身を投げるような覚悟で、申し上げます。



 貴女と再び逢いたい。二人だけで。

 初めて貴女の魔術を見せてもらった、あの夕焼けの綺麗な湖にて。



 無理に返事をなさらなくても構いません。上記について一切忘れてくださっても良いです。


 時を経ても、優しく謙虚な貴女でいてください。


               レゾヌマ・フォンセ


 

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