第3話「F4」
先輩を捕まえ、聞く。
「すみません、自販機ってここあります?」
「あぁ、門の近くにあるよ。いっておいで。」
「はい。」
少し歩くと、今朝通った小屋のシャッターが開いていた。
中を覗くとフォーミュラカーが置いてあり、エンジンがかかっていた。
「わぁ…」
その時、整備していた男性がこちらに気づく。
エンジンを切り、声をかけてくる。
「どうした?」
「あ、す、すみません!すぐ立ち去るんで!」
急いで離れようとすると止められる。
「あ、待って!」
「?」
「もしかして、こういうの興味ある?」
その男性がフォーミュラカーを指差す。
「あ、はい!自分レースが大好きで、いつかは乗ってみたいなとは思ってます!」
「ちょうどいいかもな…」
「なんですか?」
「実は、このクルマ、F4っていうカテゴリーのクルマなんだけど、元々社長が乗っていたんだ。」
「え、この会社の安住社長がですか!?」
「そう。でも、社長の老体もあって、活動は終了になってしまったんだ。」
「じゃあ、なんでこのクルマ整備しているんですか?もう走らないなら売るとかあったんじゃないですか?」
「いやー、君みたいに興味ある子が現れるのを待ってたんだ。また安住レーシングとして活動できるように。だから、有志で整備してちゃんと動くようにしていたんだ。」
「そうなんですね。」
「今度、社長に掛け合ってみようか?」
「いいんですか?で、でも、申し訳ないですよ」
「いいんだよ。俺達はいつかまたレースしたかったんだよ。それに、君もレースに憧れているんだろう?」
「ま、まぁ。」
「じゃあ、社長に交渉してみようか。」