第34話「ファイナルレース」
モビリティリゾートもてぎで、FIA-F4の最終戦が幕を上げる。
「瀬成、今日は特例で昨日記録した2位の記録が引き継がれる。だから優勝を目指せるかもしれない。」
「変に意識しちゃうじゃないですか〜…」
「大丈夫。1位の石井は俺が抑えてやる。だから前だけ見て走れ」
「了解です」
瀬成の左前方に石井の乗る1号車がスタートの時を待っていた。
「あいつを抜けば、僕は1位だ…大丈夫。お父さんの教えをしてみるだけだ…」
スタート前。
「瀬成、何見てるんだ?」
「あ、いや、昔父にもらった雑誌見てたんですよ。」
「ほーん。お、お父さんも載ってんじゃん。」
「これ見てください。」
「えーと、〝レースで大事なのは、どのカテゴリーだろうとファンに見てもらうという気持ち〟か。」
「今日は2位からスタートできるじゃないですか。だから、ファンは少なくともアピールできるんじゃないかって。」
「ファンだけじゃないぞ。きっと上位カテゴリーのチームの人たちにもアピールできる。」
「そうですね。前、蓮真先輩が言ってたさらに楽しい場所を目指して走ります!」
「そうだ。楽しい場所目指して頑張るぞ。」
実はこの頃、蓮真にはスーパーGTのチームからすでにオファーが数件来ていた。
そして今に戻る。
目の前でスタート1分前のボードが掲げられる。
「エンジン始動っと。」
今朝も確認したエンジンに再び火が入る。
1周のフォーメーションラップの後、グリッドに戻ってくる。
「初めてのフロントロー。でも、このまま走りきっても表彰台は絶対。でも、狙えるなら、1位、狙ってみますか!」
シグナルオールレッド。
全ドライバーの緊張が最高潮に達する。
ライツアウト。
一斉に弾かれたようにグリッドを蹴り出す。
少々気負った颯はスタートをミス。
軽くエンジンストール気味になる。
その横から1位をかっさらうように蹴り出すのは90号車の瀬成。
後ろで見ていた蓮真も気づく。
「もろたで!」
突然の関西弁。関東圏出身なのだが…
一瞬で1位だった颯は一気に5位まで順位を下げる。
「大丈夫だ…俺なら、俺ならやれる…!」
颯の猛追劇が始まる。
「後ろは、蓮真先輩…颯さん、そんなに順位落としたのか…」
「これはラッキーだ。1番のあいつが結構順位を下げてくれた。なら、その間に瀬成が逃げ切れるだけのタイム差を稼ぐだけだ…」
蓮真の前を走るのはツギハギのようなカラーリングの90号車。
後方に沈んだ1号車は着実に1台ずつ、オーバーテイクを続けていた。
「負けてられるか…」
また1台パスし、3位まで戻ってくる。
蓮真はもうすぐそこだ。




