第33話「再始動」
「よし!すべてのパーツの搭載が完了した!みんな本当にありがとう!これは私からの少々の感謝の気持ちだ」
安住代表は飲み物と封筒を配っていた。
封筒の中には千円が包まれていた。
「申し訳ないですよ!」
「僕達はただ瀬成くんのマシンを直したくてやっただけなんですよ!」
「いや!みんなはこの時間まで頑張ってくれたんだ、受け取ってくれ!」
「ふぁ〜。とりあえずみんな寝ましょう。僕達のチームの整備もこのあと待っていますから。」
「そうですね」
瀬成の90号車の修理に貢献してくれたメカニックたちはホテルに戻り、仮眠をとることにした。
4時間後、FIA-F4決勝レーススタート20分前。
「おはようございます!自分も元気になりました!」
瀬成がテントに入ってくる。
メカニックたちから拍手が上がる。
「おかえり、瀬成。」
「はい、ただいま戻りました、蓮真先輩。」
「マシンは出来上がった。ただ、カラーリングは戻らなかった…」
「こっちのほうがかっこいいじゃないですか。みんなの意思を背負って走るみたいじゃないですか」
「…そうだな」
「実は、まだエンジンを始動できていないんだ。だから今からしてみてほしい」
瀬成は持ってきた荷物を置き、マシンに乗り込む。
「じゃあ、行きますよ」
クラッチを踏み込み、エンジン始動ボタンを押す。
何回か始動に手こずる。
「大丈夫、絶対かかる」
この自信がどこから来るかはわからない。でも、かかる、そんな気がした。
「んん、きた」
テント内に轟音が響き渡る。
拍手と歓声が上がる。
瀬成の表情が一気に明るくなる。
「やった!やったよ蓮真先輩!」
「よかった、よかった…」
蓮真の緊張の糸が切れたようだ。
何度かエンジンを吹かし、さらに調子を確認する。
「OKです」
エンジンを切り、マシンから降りる。
「本当にありがとうございます!」
瀬成は勢いよく頭を下げる。
「いいんだよ、瀬成くんが帰って来るのを願ってたから」
「…じゃあ、今日の決勝、いつもよりさらに速く走って優勝してきます!」
「瀬成、こういうときこそいつも通り行くんだ。変に気張ると逆に調子崩すぞ」
「はい!」
「さぁ、AZUMI racing、再始動だ!」
「「おぉぉぉぉぉ!」」
AZUMI racingの士気は最高潮に達していた。




