第32話「復活」
「…90号車はモノコックが歪むほどのダメージ。これは無理だ。もし、これをベースに修復してもまっすぐ走らない。」
「どうする?マシンの替えはきかないぞ?」
「マシンならありますよ。俺の91号車に乗らせます。俺は明日は出られなくてもいい。瀬成が優勝できるチャンスなんですよ?」
「だが…」
「お願いします!あいつを、瀬成を勝たせてやりたいんです!F110のSUGOでも2位だったし、F4に来てからは表彰台にも上がれていない!」
「しかしな…」
「お取り込み中失礼します…」
「なんですか?」
「あ、私、ムーンクラフトの車両供給担当です。実はうちの代表の方からモノコック、エンジン、ギアボックスなどのコンポーネント類を供給したいと、申し出がありまして。」
「それは本当ですか!」
蓮真が食いつく。
「えぇ、ただ、カウルは用意できませんでした。本当に申し訳ありません。」
「いえいえ、コンポーネント類がいただけるだけでもありがたいです。」
すぐにコンポーネント類がAZUMI racingのテントの前に運ばれてくる。
「本当にありがとうございます!感謝します!」
「ぜひ、明日の決勝レースにこの90号車が並ぶことを願っています。」
すると、また声がかかった。
「おーい、蓮真いるかー?」
「はい!ここに!」
「あ、Bear's racingの!」
「久しぶりだな。話は変わるが、大変なことになったな。」
「えぇ。」
「それで、これを使ってほしい。」
「こ、これって。」
「うちのサスペンションのスペアだ。使ってくれ」
「ありがとうございます!」
「なんなら、うちのメカも何人か送ろうか?人数は多い方が良い。」
「本当にありがとうございます」
「うちのも!」
「俺達のも!」
数多くの有志が、パーツをたくさん提供してくれた。
「こんなにたくさん…」
「これなら、90号車を復活させられます。」
「修理していきましょう!」
「「「おぉぉぉぉ!」」」
テント内に雄叫びが響く。
「よし、では、組み上げを開始しよう!」
カーボン剥き出しのモノコックがテント内に運び込まれる。
「まずはエンジンとギアボックス、サスペンション類を取り付けていきましょう。」
「じゃあ、Bear'sのみなさん、エンジンとギアボックスをお願いします。」
「俺達でサスペンションの取り付けを行っていきましょう。」
作業開始から気づけば日も沈んだ頃、マシンの原型が出来上がってきた。
「エンジン、ギアボックス取り付け完了しました!」
「ありがとうございます!」
「サスペンションもあと少しで固定できます!」
「修理ご苦労さま、差し入れだ!お弁当、食べてくれ!」
「「ありがとうございます!」」
「じゃあ、一回、休憩しましょう!ここまでぶっ続けで作業してましたし」
「エンジンはどうする?このあとはもうさすがにかけられないだろ?」
「そうっすねぇ…どうしよう。ってなるともう明日しかないですよね…」
「そうだな。決勝レース前にエンジンは始動になるな。」
「とりあえず、エンジンは始動させずにできるチェックを行いましょう。それと、サスペンション担当の俺達はブレーキを確認しましょう」
「「はい」」
「蓮真、お前はもうホテルに戻りなさい。明日の決勝レースに備えなさい」
「わかりました。」
蓮真は荷物をまとめる。
「じゃあ、お先に失礼します。あとはお願いします」
「はいよ!」
「しっかり休んでこいよ!」
「俺達に任せろ!」
メカニックたちが答えてくれる。
マシンの復活を祈ろう。




