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F4 P1を目指して。  作者: 銀乃矢
FIA-F4編
35/44

第31話「予選」

最終戦、もてぎの舞台で予選が始まっていた。


AZUMI racingの2台がトップタイムを連発する。


しかし、それに負けじとVision motor sportsの1号車が記録を更新する。


2チームの接戦が繰り広げられていた。




その時、91号車に乗る、蓮真は第9コーナー、90°コーナーで軽くコースオフ。


「しまった。ここでミスするともうダメだ…」


「こうなったら、後続の瀬成を援護しよう。ダウンヒルストレートで追いついてくれるように計算しよう…」




「…今僕はP3。まだ、タイムを縮められる…」


コースを走り続ける90号車はダウンヒルストレートへと向かう。


「蓮真先輩のマシン…あの位置関係なら、あれが使える…」


瀬成は蓮真の後ろに近づく。


「あの日教わったスリップストリーム…ここで使える…」



実際、F1でもトゥと言って予選でこのテクニックが使われることがある。



加速した瀬成は少々タイムが向上した。


しかし、彼には魔の手が迫っていた。



2台の少々前を走行する17号車、アシュリー・ジャクソンのマシンが不思議な挙動をしていた。


「ごめんなさい、ミスターセナ…ッ!」


17号車が急に進路を変更する。


「えっ…」



瀬成のマシンがアシュリーのマシンのリアタイヤに乗り上げる。


そのまま90号車は宙を舞い、何度も横転する。


「ッ…!!!」

強い衝撃が瀬成を襲う。




「瀬成ッ!!」

蓮真はすぐ後ろでその光景を見ていた。



そのまま横転し続けたマシンはタイヤバリアに激突した。


「瀬成!」


マシンを急いで降りた蓮真はマシンに駆けつける。


駆け寄ると横転したままのマシンに瀬成が取り残されていた。


「瀬成、今助けるからな!」


蓮真はシートベルトを外し、少しでも動きやすくさせる。


「行くぞ!」


一気に瀬成を引きずり出す。


「瀬成!瀬成!」

体を揺さぶるが起きそうにない。


「さっきの衝撃で気を失ってるのか…」


すると、救急車が到着した。


「瀬成を頼みます!」


救急隊に瀬成を預ける。


走り去っていく救急車を見ていた。


そして、マシンを見る。

白煙を上げ、横転したまま大破した90号車。

「これは無理だ。明日の決勝も出られない。まず、あいつが目を覚ますか…」




ピットに戻ってくると、チームのエンジニアが話しかけてくる。

「今、安住代表は瀬成くんに付き添って病院へ向かった。どうする?お前も行くか?俺が送るぞ。」

「頼みます」



瀬成の容態が心配だった。


着替えないまま、レーシングスーツのまま、病院へと向かった。



「着いたぞ。」

「ありがとう。」


クルマを降り、病院の受付へと向かう。


「あの、大野瀬成っていませんか?」


すると、病室に案内される。


そこには安住代表と、さっき目を覚ましたばかりなのだろう。不思議そうにしていた。


「あ、蓮真先輩。」


無事に会話している瀬成を見て、涙が溢れてくる。

「よがっだ…無事っで…」

「ちょっと、蓮真先輩、何泣いてるんですか?大丈夫ですよ。僕なら明日のレースも出られます!マシンはダメですけど…」


「…マシンはなんとかしてやる。任せておけ。俺も元はこのチームのメカニックだ。」


蓮真は胸を叩く。

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