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F4 P1を目指して。  作者: 銀乃矢
FIA-F4編
33/44

第29話「プライベートテスト2日目」

朝から2人はF4マシンで周回を重ねていた。


すでに彼らがF4の本番で走る周回数をゆうに上回っていた。



「瀬成、走りが安定してきた。いいぞ、その調子だ…」



「走りやすい!F4ってこんなに楽しいものだったんだ!」





午前中の練習走行が終わる。

「瀬成、しっかり走れるようになったじゃないか。これなら、次の大会も大丈夫だよ。」

「本当ですか!」


「こんだけ安定して走れるなら、午後は俺と勝負してみるか!」

「まじですか!?」

「あぁ、すでに安定して走るコツを掴んでるんだからできるよ。」


「で、でも、蓮真先輩はプロ級じゃないですか…アマチュア同然の僕は…」

「お前、そう言って弱気だけど、タイム的には俺のコンマ数秒落ちだからな?」

「そうなんですか?!」

「お前、本当に自分の走りのすごさに気づいてないんだな。初めてF4乗った筑波での1分切りとか」


「あ、あれは本当に気づかなかったです。あの時、マシンの振動がすごかったからコースオフとかしまくったな…って思ってました!」

「あれ、コースオフしてないぞ。全部、ブレーキの振動だよ。あの頃、あのマシンブレーキに問題があったんだ。」

「確かに、ブレーキが異常に重いとは思ってました!」

「それはF4の特性だ」

「違うんですね」



「ま、そんな手負いのマシンでもあの走りをしたんだ。午後は楽しみにしておくよ」

「は、はい」





午後、蓮真と瀬成の2人だけの特別戦の詳細を安住社長から伝えられていた。

「ルールとしてはレースは5周、本番と一緒でコース外からの追い抜きは禁止。万が一、パーツを壊すようなことがあればすぐにピットインすること。以上。」

「それと、今回は特別にスタンディングスタートの許可ももらっている。練習してみてくれ」


「「はーい」」



午後の練習走行が始まる。

2台がコースインし、1周した後、グリッドにつく。


瀬成が1番グリッド、蓮真が2番グリッドにつく。


「すごい。本番じゃあ、まだほど遠い1位のグリッドにいる…」


「瀬成、1位のグリッドに感動してるな…かわいいやつだ。」


『2人とも、シグナルに集中、もうすぐつくよ』



レッドシグナルが一つずつ灯っていく。

数カ月前は40台に迫るエンジン音が響いていたが、今日は2台だけ。

少々寂しさはあるかもしれない。


「…蓮真先輩を超えるッ…!」


5つ灯ったシグナルが一斉に消え、2台が1コーナーへと向かう。



あの時、F110で走ったとき対応できなかったレイトブレーキにも対応できるようになった。


「ここでラインを変更すれば…」

「おぉ、あいつもラインを変えさせるのを覚えたか。成長だな」




周回が進むにつれ、瀬成には疲労が見え隠れするようになってきた。

「ふぅ、ふぅ…」


「瀬成、少しずつ走りが荒くなってきた。多分疲れ始めてる」



「まだ、まだ行ける…」


「まだ行け…」



蓮真の目の前で90号車がスピンする。


「!?」


「はぁ、はぁ…」


「安住さん、多分もう無理だ、瀬成は多分疲れ切ってる」

『わかった、あいつをピットに戻す』

「頼みますよ」



『瀬成、聞こえるか。もう疲れ切っているだろう。ピットに戻ってこい。』

「決着がついてないっす!」

『でも、もう無理だ。お前の体は完全に疲れ切っている。』

「…わかりました。」


90号車がコースに復帰し、ピットへと戻って来る。



「おかえり。大丈夫か?怪我はないか?」

「大丈夫です。」

「今日はもう終わりにしよう。昨日までの成果だけでも十分だよ。」

「確かに、ピットに戻ってきてからどっと疲れが来ました…」( ˘ω˘)スヤァ


「寝ちゃったよ。」

「瀬成は…聞くまでもないっすね」

「あぁ、今話し終わったら寝ちゃったよ」

「じゃあ、俺がクルマまで持っていきますよ。」


蓮真が瀬成をお姫様抱っこするようにしてここまで乗ってきた自分のクルマに乗せる。


「ここまで揺れることもあったのに起きねぇ、こいつ。眠り深すぎだろ」



この2日間で2人には得られるものがあったようだ。




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