第28話「プライベートテスト2日目早朝」
翌日、富士スピードウェイを朝日が照らす。
瀬成は日が昇ったばかりの富士スピードウェイのホームストレートに座っていた。
「…」
「どうした、瀬成。」
「あ、蓮真先輩。」
「なんでもないですよ。」
「なんでもなくて、ここにはいないだろ。」
「…実は、レーサーなれるとは思ってなかったんです。」
「なんだって?」
「実は自分、何もかも、親、特に母から否定されてきて。」
「それって進路とかってことか?」
「そうです。行く高校も大学も病院も決めてきて。」
「医者を目指してたってことか?」
「まぁ、そんなところです」
「でも、自分の父は対照的でレースも好きで、なんでもOKって感じだったんです」
「お父さんの名前は?レースが好きならもしかしたら関係者にいたかも…」
「大野真司です」
「大野…真司…あ!あの!?あのOSモータースポーツの?!」
「そうです。全日本F3でドライバーやってた人です」
「あの全日本F3でチーム代表としてもドライバーとしても活躍していた!?」
「その大野真司です。」
「たまげたぁ…そんな天才の子どもと一緒にレースしてたなんて…」
「まぁ、それで、父のレースにもよく行ってたんですよ。母は嫌そうでしたけど」
「その時に、父の乗るF3のコックピットに座ったんですよ。それで、その時レーサーになってみたい…って思うようになったんです。」
「でも、やっぱり母親が?」
「そうです。自動車業界に関わりたいって、包んで言ったんですけど猛反対受けまして…」
「でも諦めきれず?」
「はい。それで、母との大喧嘩の末、家を出れたんで、心機一転どこかでレーサー目指してみようって。」
「大変だったんだな。」
「はい。でも、今は楽しいですよ!高校行ってたときより何倍も楽しい!」
「そうか。お前の努力しだいではさらにおもしろい世界に行けるぞ?」
「はい!そこまで行くつもりです!」
「よーし、じゃあ、今日の練習走行も頑張るか!」
「はい!」
2人は立ち上がり、ピットに向かった。




