第27話「プライベートテスト1日目」
静岡県、富士スピードウェイ。
ここにAZUMI racingのマシンたちが集結する。
「よし、今日から2日間、プライベートテストを実施する。ぜひ、実りのある2日間にしてくれ。」
「瀬成、今日の目標は再現性の確立だ。お前のライン取り、ぱっと見すべての周回でバラバラだ。」
「それだとだめなの?」
「だって、レースの世界はコンマ数秒の行動がすべての結果に直結するんだ。」
「だから、今日はとにかく走行ラインを揃える。とりあえず、このあとは俺がF110に乗るから、その後ろを追いかけてみてくれ。」
「はーい」
午前中の走行時間が始まる。
『今日だけは特別に無線を使うから、今日は無線を頼りに走ってみてくれ。』
「わかりました」
実際、F4などのジュニアカテゴリーという場ではレースでの無線の使用は禁止されている。
ただ、中には練習走行にのみ活用するチームもある。
「あ、今のコーナーミスった…」
ミラーで後ろを見ていた蓮真も気づく。
「ミスったな…まず、このあと伝えること1つ目だな。」
1.5kmのホームストレートに2台が戻ってくる。
『瀬成、そのまま蓮真の後ろを走ってみろ。速度上がるから』
「了解」
スリップストリームの効果で瀬成の最高速度が伸びていく。
『スリップストリームで速度が上がっているから、ブレーキのタイミングミスるなよ』
通常なら150mの看板でブレーキを踏むようなところをそれより手前でブレーキを踏む。
「うおぉぉぉ!!」
強い踏力でブレーキを踏もうとしたら声まで出た。
無事、コースオフすることもなく1コーナーを通過できた。
「瀬成、やるじゃん。オーバーランもしなかった。スリップストリーム使いこなせてないやつは最初飛び出していくのに。」
「危なかった…でも、あの感覚、面白い」
午前中の練習が終了する。
「ほれ、瀬成おつかれ。」
「あざっす。」
「どうだ、しっかりとスリップストリームを使ってみた感想は?」
「ゲームと似てるな、って思いました。ぐんぐん速度が上がっていくの見て」
「そうか。瀬成はゲームが好きなんだっけか?」
「はい!もう毎日2時間はやってますよ!」
「それは好きすぎだな」
瀬成は笑顔を見せる。
彼の速さはもしかしたらゲームから来ているのかもしれない。
「とりあえず、午前中気になったところだ。確認して、午後の練習で克服しよう。」
「はい!」
午後のセッションだけでもタイムはぐんぐん向上した。
セッション終了後、富士スピードウェイは夕日に照らされていた。
「よし、今日の走行枠は終了だ。お疲れ様。」
「お疲れ様です。まだ明日もありますから頑張りましょう」
「そうだな」
2人は富士スピードウェイの最終コーナー付近に建つホテルに向かった。
「よし、ちょっと休んだら、近くのファミレスでも行くか。」
「ほんとですか?やった!」
「何食いたい?」
「ハンバーグ!」
「即答だな」
「よし、じゃあ今日の夕飯はハンバーグでも食べるか」
2人はファミレスで食事を楽しんだ。




