第23話「F1レーサー」
翌日迎えた決勝レース。
全26台が富士スピードウェイのホームストレートに集結する。
「いいか。今日はスタートでエンストさせないようにだけ考えろ。順位はその後考えるんだ。」
「わかりました。」
「それと、お前の直接のライバルになるのは、17のアシュリー・ジャクソンだ。あいつが抜ければ今日は高評価だ。」
「了解です。」
安住との会話を終え、集中する。
「…大丈夫。…大丈夫。やれる。」
左前の黒いマシンを見る。
サイドには大きくVの文字をあしらったデザインが施されていた。
今大会5番手からスタートする蓮真のことを気に入っていない男が1人。
6番手グリッドの石井颯。
「なんだ、あのAZUMIって。ぽっと出のくせに5番手なんて。」
「あいつ、昔もF4乗ってたらしいぜ。お前がまだ乗る前だけどな。」
「このチャンピオンより新人が前にいることが許せない。ぜってぇ倒す。」
「その心意気だ。」
ボードが掲げられる。
「フォーメーションラップスタート1分前か。エンジン始動。」
足元のスイッチを押す。
背中に振動が伝わってくる。
エンジンは無事かかった。
「シグナルが青になった。前についていこう。」
前走車がグリッドを離れ始める。
富士スピードウェイを1周し、グリッドに戻ってくる。
「グリッドに止まるときは代表と決めた目印を狙って…」
スポンサーロゴを停止の目印にする。
後続がまだグリッドについていないため、それがつくのを静かに待つ。
すごい後方でグリーンフラッグが振られる。
スタートの合図だ。
クラッチを踏んだままアクセルを踏み、回転数を上げていく。
レッドシグナルが一つずつ灯っていく。
赤い光が消える。
40台近いマシンが一斉に発進する。
自分も周りのマシンとの距離を見ながら1コーナーを目指していく。
目の前の17番を視界に捉え続ける。
視界に捉え続けられれば確実に追いつけると思っていた。
レース5周目。
「なんだろう、なんで、前の17番の走りが読めるんだろう。」
「なんか、みたことあるんだよな。あの走り」
少しオーバースピードでコーナーに進入し、軽いドリフトでコーナーを脱出していく。
「あ、思い出した!F1のハリソン・ジャクソンだ!」
そう、アシュリー・ジャクソンはF1ルーキーのハリソン・ジャクソンの妹なのだ。
そのため、妹であるアシュリーはハリソンの走りを真似ていたのだ。
そしてこの走らせ方はハリソンがF1の開幕戦でのみ披露したもの。
これ以降はロスの方が大きいということでお役御免になったらしいが。
「これ、利用できれば1個順位上げられるじゃん。」
敵のクセを使って戦っていく。




