第21話「F4開幕」
5月、富士スピードウェイ。
「すっげぇ!僕、パドックに入ってる!」
パドックとは、レース車両を運ぶトレーラーや、ドライバーたちが待機する場所だ。
「ほらー、瀬成、置いてくぞー」
「待ってくださーい!」
F4は少し離れたところにあるテントで整備を行っている。
「これがAZUMI racingの新カラーリング…水色がきれい…」
「私が好きな色だからな。」
「前、僕が乗っていたF110はメタリックブルーでしたよね。」
「そうだな。」
「あれも好きな色なんですか?」
「あれは、俺の奥さんが好きなんだよ。当時は俺が乗っていたしな。奥さんの好きな色のマシンで走ってるのを見てほしかったんだ。」
「そうなんですね。」
「これ、車重重くなってそうですね。」
そう呟くのはマシンをまじまじと眺める蓮真。
「あぁ、安全装備とかFIAの新しいレギュレーションに合わせて改良した結果ちょっと重くなったそうだ。でも、その分、エンジンもパワーが上がってるそうだ。」
「じゃあ、僕が乗っていたF110よりはストレートとかも速くなるってことですか?」
「セッティング次第になるかもしれないが、まあ、そういうことにはなるな。」
30分後、予選開始10分前。
2名のドライバーがレーシングスーツに身を包み、ヘルメットを被り、戦闘態勢になる。
「いいか、ふたりとも。今日の目標はクルマを壊さずに持って帰ってくることだ。」
「「はい」」
「よし、行って来い。」
安住が2人の背中を叩く。
2人がマシンに乗り込む。
エンジンをかけ、テントを離れる。
「大丈夫。富士はシミュレーターで何百周もした。大丈夫、大丈夫。」
「久しぶりだな。F4。あれからもう3年くらいは経つのか。まだ、腕が錆びてないといいんだが…」
2台が1列に並んでピットレーンを進んでいく。
「ここでピットレーンリミッターを切るっと…」
ステアリングのPITのスイッチを押すとリミッターが外れる。
「うおっ。F110より確かに加速力がある…」
AZUMI racingの2台は好調に走り出した。
2台が計測ラップに入る。
「この周から計測。タイム差とか、順位は都度、サインボードでメカニックさんたちが教えてくれる。」
「瀬成、大丈夫かな。一応、後ろから様子も見てみよう。」
1コーナーを抜け、コカ・コーラコーナーに向かう。
「ここは、5速から4速、もしくはそのままブレーキを少しかけるだけ…」
しっかりと安定してコーナーに進入する。
シミュレーターの成果はあるようだ。
予選が終わり、翌日の決勝開幕を待つだけとなった。
順位は以下の通りだ。
90号車 大野 8位
91号車 織田 5位
関係者はこの結果に驚いていたが、一部からは気に入られていない結果だった。




