第12話「予選」
土曜日、12月のもてぎは寒さが厳しかった。
「さぁむ…ヒーターあったけぇ…」
「お前はいつまであったまってるんだ。もう予選10分前だぞ。準備しないと。」
「はーい。」
ヒーターを離れ、ヘルメットを取りに行く。
そして、被り、ガレージに向かう。
「よいしょっと。」
「頑張れよ。」
「あいっ!」
マシンに乗り込み、エンジンを始動させる。
日野森代表がGOサインを出してくれる。
ピットを離れ、ヘルメットのバイザーを閉める。
そのままコースイン。
「ドグミッション、コツがいるけど、乗りこなせたら楽しいな〜。」
ドグミッションとは現行のFJマシンに使用されている変速が特殊なミッションだ。
通常、マニュアル変速の場合、クラッチペダルを踏み、変速する。
ドグミッションではアクセルのオンオフで変速が可能なのだ。
そのため、うまく行けばきれいな変速ができるのだ。
「次の周から行ってみるか。」
スタートラインを通過する。
計測開始。
「乗りやすい、最高だ。蓮真先輩のセッティング、完璧だ。」
この週末が初乗りのマシンだが、限界までマシンを使い込めているようだった。
結果、予選は16位/46位だった。
「16位だ。よくやったな。」
「あのセッティング、乗りやすかったです。」
「なら良かったよ。でも、一番頑張るべきなのは明日の決勝レースだぞ。」
「はい!」
この決勝レース、大荒れの展開となっていく。




