第10話「入門」
小野院長のあの言葉を理解した2週間後。
「僕をスーパーFJに?」
「あぁ、FIA-F4に出るにあたってまだ大野は経験が少ない。だから、FJの日本一決定戦に出てもらう。」
「わかったけれど、チームは?」
「チームについては俺が昔いたハヤブサモータースポーツに話をつけてある。」
「来週、諸々の話を聞きに行くぞ。」
「はい!」
翌週、ハヤブサモータースポーツ事務所。
「ここだ。」
「外にも色々なクルマが置いてあるんですね。」
「あぁ、FJとかみたいなジュニアカテゴリーのマシンの整備を結構請け負っているらしいからな。」
「おっ、蓮真、元気だったか!」
「はい、元気でしたよ。代表もお元気そうで。」
「おう、俺は元気だぜ!腰は壊したけどな…」
「もう、体労ってくださいよ。」
「それで、隣の彼が噂の?」
「あぁ、はい。ほら挨拶。」
「大野瀬成です。よろしくお願いします。」
「君がね。私はこのチームの代表である日野森仁だ。」
「早速、君が日本一決定戦で乗るマシンを見に行こうか」
「はい!」
ガレージ内を歩いていくと様々なカラーリングのFJ車両が並んでいた。
「あの、この並んでいるクルマたちは?」
「これはみんな俺にメンテナンスを委託してくれたクルマたちだ。メンテナンス業務もやっているからな。しょっちゅう大忙しだ。」
「さて、君が乗るのはこのクルマだ。」
そのマシンにはブルーシートが被っていた。
シートが剥がされると、ハイノーズなフロントが特徴のマシンが現れた。
「おぉ…これがFJ。現物は初めてみた。」
「そうかい。それで、性能については安心してくれ。蓮真から話を聞いてからできるだけメンテナンスしてきた。きっと乗りやすいマシンになっているはずだ。」
「ま、座ってみなよ。」
マシンに乗り込んでみると
「ちょっと、せ、せまい…」
「F4よりは少々小柄なマシンだからな。まぁ慣れれば大丈夫だよ。」
「走るの楽しみです。」
「そう思ってくれたならなによりだ。」




