↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪役令嬢の前世がスーパーなマンだったので、断罪イベントより先に農業革命で国を救ってしまいました(クマとかヴィランもいるよ!)  作者: スカンジナビア半島
第一章 Secret Rebirth

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
9/125

【八】こっだ熊しがいねよなどご

 ヒーローになる気はなかった。

 農家を継ぎたかった。

 ならば、なぜしなかったか。


 子どもはいつか、自分で進路を決める時が来る。

 学業は概ね優秀。教師の評価も悪くない。

 農業を研究する大学に進学。

 卒業したら実家にUターンして家業を継ぐ。

 そのまま家業を継ぐという完璧なプランを、僕は立てていた。


「おめには無理だ」


 座敷で膝を突き合わせ、その通りの人生プランを開示した。

 父は腕を組んで押し黙り、

 母は言いにくそうに僕の夢を否定した。


 ショックだったが、テレビでもよく見た光景だ。

 親は子どもの夢を最初は否定するもの。

 けれども、すったもんだがあって家族はついに子どもの夢を認め、家族で抱き合って愛情を確認し合うものだ。

 僕は長期戦を仕掛けるつもりだった。


「んだなあ……おめにはもっと良い進路があるはずだでゃ(そうだなあ……お前にはより良い進路があるはずだ)」


「だども、そんだこど言われだっでしかたねべさ。おぃはずっと農家さなりたがったんだしよぉ(だって、そんなことを言われても困るじゃないか。僕はずっとこれを進路にしていたんだよ)」


「おめが農家になるな、無理だ。小3の夏にあっだこど、思い出せった(お前が農家になるのは無理だ。小3の夏にあったことを思い出してみろ)」


「なんのごとが、わがんねっだ」


「害獣に悩まされでだ時があっだべ? おめ、その時になにしだ?」


 その時のことなら覚えている。

 熊の襲来が日常的にある秋田だが、その時は狸による被害に悩まされていた。

 見た目は可愛く、人に懐くこともあるから心が痛むが、農家の宿命として、僕は対処しなければならなかった。


 だから僕は、狸が嫌がる臭いを発するスプリンクラーを設置した。

 自分で言うが、会心の出来映えだった。

 液体は土壌に影響を与えず、狸も嫌がるだけで怪我をしない。

 量産もできる。


 これで両親の仕事の役に立てると思うと、誇らしかった。

 あと、特許を取ったらかなりがっぽり稼げる。


「初めての発明」


「おめっだら、自由研究で発表するつもりだっだな」


 効果はてきめんだった。

 狸はうちの土地には寄り付かなくなった。

 両親は毎晩、狸が来ていないかの見回りをしなくてよくなった。

 我が家の夜は静かになった。


「これが、追い払われだ狸がみんな他所様の土地に行ってねがっだらな」


 事実だった。隣人が住まう10km圏内の土地はみな、狸の被害で作物が台無しになった。

 僕のせいとは言っても信じてもらえないだろうから、そこは伏せるとしても、家族は「うちが無事ならいいじゃん」と言う人々では断じてない。


 僕の発明が原因で受けた被害を、できるだけ補填した。

 そのせいで、僕のために貯めていた学費と結婚資金が飛んでしまった。

 結婚はともかく、学費は奨学金で賄える。

 けれども、それで罪悪感が消えたわけではない。


「おめだっだら、害獣を適度に駆除もできだべや(お前なら害獣を適度に駆除できただろう)」


「そ、そでは……(そ、それは……)」


 農家としては、そうするほかないのはわかる。

 一度、人里に降りる習慣がつき、人間の食べ物を漁ることを覚えたら、山に戻しても必ずまた降りてくる。


 だが、狸が可哀想で出来なかった。

 結果、より広範囲に深刻な被害をもたらした。


 両親は決して僕を叱らなかったし、気落ちした姿を見て、ただそっとしておいてくれた。

 僕は布団の中で何時間も涙で頬を濡らした。


「農家は生命を育てて、そのために駆除もする仕事だ。おめに、後の方はでぎねもの(お前に後の方はできないさ)。おめにはもっど向いだ仕事があるった(お前にはもっと向いている仕事がある)」


「んだ。こっだ熊しがいねよなどこにいでもしょうがね(そうよ。こんな熊しかいないところにいてもしょうがないわ)」


 両親の言うことは正しい。

 僕に生命の選択はできない。

 したとしても精神が耐えられない。

 農家の適性がまるでないのは、その通りだろう。


 けれども、それなら…………。


「僕は、なにになればいいんだ?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。