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田村のファン

 

 「お待たせしました。どちらまで行かれる予定だったのですか?」と私(田村)が尋ねると、

 

 「この近くのK大学病院です」と少し年配の女性が言った。


  私は彼女の自転車を押してあげることにした。

 

 「失礼ですが、通院されているのですか?」と私は聞くと、

 

 「いえ、私でなく孫が昨日、入院したと連絡が入りまして」

 

 「お孫さんは、おいくつなのですか?」

 

 「今は確か5歳で幼稚園に通っています」

 

 「早く退院ができればいいですね」


  そして、彼女は私の顔を不思議そうに見ると、

 

 「大変失礼ですけど、ジャガーズの田村選手に似ていると言われないですか?」と彼女が聞いたため、


 「たまに言われますね」と私は少し笑った。


 

 病院までの数十分、私たちはジャガーズの話などをした。


 すると、彼女の孫がジャガーズのファンであるということ、また田村のこともよく知っていると言ってくれた。


 病院が近くに見えてくると、

 「ありがとうございました。こちらで結構です。お時間をとらせてしまって申し訳ございませんでした。ところで、さっきバスに乗っておられた人達は先に行かれたのですか?」と彼女が聞くと、

 

 「ええ、先に行きました。でも、ここから車で15分くらいのところですので」と私が言うと、彼女はいきなり財布を取り出して、

 

 「失礼ですけど、受け取って下さい」と言い、お金を渡そうとしたのだ。

 

 「いえ、それを受け取ることはできません」と私は断った。


 私は、正直に話すことに決めた。

 

 「実は、私、ジャガーズの田村です。嘘をついてすみませんでした。あと三日間は大阪にいますので、お孫さんのお見舞いに行ければいいのですが・・・」


 「ありがとうございます。孫に自慢ができました。ジャガーズの田村選手に会ったよって。きっとびっくりすると思います」と彼女が言った。

 

 「もし、よろしければ、お孫さんの名前を教えて頂けますか?」と私が聞くと、

 

 「大地です。村山大地と言います。大地の父親がジャガーズのファンで、大地が二歳くらいの時から、ずっと一緒に応援しているのですよ。田村選手がテレビに写ると、大地は「タムだ、タムだ」と言って喜ぶのです」

 

 「そうなのですか? 嬉しいですね。大地君に(頑張って、早く治してね)と伝えて下さい」と私は言った。

  

 そして、私はタクシーを拾い、宿舎のホテルへ向かった。






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