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獄中賢者は侮れない  作者: 紫 十的@漫画も描いてます
第一章 聖女を見いだす
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対黄金の竜

 あたりは暗い。明かりの無い真っ暗闇だった。

 闇の中、ドォンドォンという破壊音が間近で響く。

 まるで爆発音のようなそれは、背後の壁……いや天井が壊れる音だ。

 下からせり上がる存在に押し上げられる。ただひたすらに。

 敵は押しつぶすつもりのようだが、ボクを包む防御壁はとても硬い。

 押しつけられて、ボクの背後にある天井は壊れていく。


「ギリッ」


 歯を食いしばる。

 ボクは気を強くもって、魔法の維持に力を込める。

 そうして押しつぶされそうなプレッシャーに耐えた。

 しばらくそんな状況がつづく。

 だけれど、それは永遠ではない。

 ややあって、パァッと一瞬で辺りに光がさした。

 外へ出たのだ。

 監獄の中央塔は、せり上がる存在とボクにより破壊された。

 後の支えがなくなり、ボクの身体は外へと大きく放りなげられた。

 大きく空に舞い上がったボクの目に、巨大な敵の姿と、破片をまき散らし4つに裂けて倒れゆく中央塔……さらにはそれに巻き込まれたストームジャイアントの死体があった。

 監獄全体が視界に収まっている。

 ボクは一瞬でとんでもない高さまで打ち上げられたらしい。

 背後に雲があった。まるで白い壁のように、敵とボクの影を落とす。


「でかい」


 ようやく敵の姿が判明する。

 真っ黒い布をマントのように羽織ったゴールドドラゴン。

 もっとも普通のドラゴンでは無い。

 違うのはサイズ。普通のドラゴンにしてはサイズが大きすぎる。

 普通のドラゴンは、大きめの一軒家くらいだ。

 だけれど、眼前のそれは、あまりにも巨大だ。すでにガレキとなった中央塔と同塔……いやそれ以上大きな体躯。

 手の平にあまるほど巨大なカエルと、小さなハエ。

 ボクとヤツのサイズには明確な差があった。


「どうする」


 考えている暇は無い。

 敵は真っ赤に輝く瞳でボクを捉え、次の一撃を準備していた。


『ガバァ』


 音をたててヤツは巨大な口を大きく開いた。視界がヤツの開いた口でいっぱいになる。

 その口の奥にチラチラと火花が見えた。


「ブレスか!」


 受けきれない。すぐに魔法を使う。

 飛翔と空中歩行の魔法。

 今度もギリギリだ。何も無い空間を踏み込み間一髪でブレスを避ける。


『ゴォォォ』


 ボクの直ぐ側を真っ赤な炎を息が通りすぎ、雲を切り裂いて空へと抜けた。

 防御壁がブレスの余波で破壊されてしまう。凄まじい熱で頬が痛い。

 そのうえブレスに気をとられヤツの接近を許してしまった。


『バサリ』


 大きく羽ばたきスピードをあげたヤツはボクの頭上へと陣取る。

 その巨体は、ちょっとした動きでさえあたりの空気をかき乱す。風音をともっなった強風は、雲をかきけす。

 風は嵐のように続く。

 乱気流に耐えるべく、飛翔の魔法のコントロールに集中する。

 しかも飛ぶスピードはかなり速い。油断は出来ない。

 そんな状況でヤツが繰り出した攻撃は意外なものだった。

 ヤツの黒いマントが波打ち、その一部が伸びてきた。

 ほつれた糸のように見えたそれは、何本も飛び出し、束となってボクに向かってくる。意志のある触手のように。

 細い糸は絡まり太いロープ状になった。さらに姿は変化し、ロープの先端は鳥のかぎ爪のような形となってつかみかかってくる。


「しまった」


 ギリギリ避けたはずが、つかまれた。

 その攻撃は背後からで、衣から伸びるかぎ爪は一本だけではなかったらしい。すぐさま身体を翻し、魔力を込めた手刀で、ボクを掴む糸を切断する。

 寿命を支払って強化していなければできない芸当だ。

 だけれど、その力もいつまでも持たない。


「どうする?」


 再び己に問う。

 粘るしかない。

 すぐに結論を出す。クリエが逃げる時間をかせぐのだ。あとは適当な所できりあげて、全力で逃げる。

 戦って勝てる自信は無いが、弱気ではしのげそうもない。

 倒すつもりでやろう。

 酷い状況にもかかわらず、ボクは「ははは」と声を上げてわらった。

 笑うとなんだか腹が立ってきた。平和な日常を壊しやがって……と苛ついた。

 ボクの頭上におさまり、逆光により光に縁取られた金の竜を睨んだ。

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