立ち向かう(2)
遅れるのがいつものことになってしまっている。どうしよう
まだ三人称って感じです。バトルって難しいわ
シアナはムイラを守ろうとする。
今となっては可愛い妹のような存在だから、一人だけの自分を慕ってくれる人だから。
ムイラは今、とても怖がっている。
怒りを露わにした人間の視線に当てられているから。
太陽がまだ出ているため、体が溶けてきて、だいぶ体が痛み始めているから。
門番はシアナを集中的に見ているが、そこから溢れる視線の圧で心が締め付けられていた。
「なにあれ…?」
シアナとムイラは、怒り狂った門番を見て、膨大な量の魔力が門番から放たれていることに気づく。
「あの僧侶は、誰よりも優しかった仲間だし、あいつは俺の親友で相棒みたいな奴だった。そいつらの命をお前らみたいな悪魔に踏みにじられて…正気でいられるか!」
「お前らは何が何でも殺す、我々の手で」
シアナからすれば、只とち狂っているようにしか見えない。正当防衛で殺してしまったものを何故、圧倒的悪で責められなければいけないのか。
確かに大事にしていた仲間が殺されたら怒るだろうが、攻撃を仕掛けてきたのなら返り討ちに合う覚悟もあるはずだ。
そんな考えを共有できるわけもなく、門番は鬼の形相で襲ってくる。爆発魔法を辺りに散りばめながら襲撃をしてくる。氷の剣を構えても爆破されて、そのまま殴られて吹っ飛ばされる。
「いっ!」
「シアナさん!」
シアナは吹っ飛ばされてもすぐに立ち上がり、氷の槍を発生させ、相手に送りつける。
目線だけで、ムイラには大丈夫だということを知らせる。
相手は暴走状態だ。魔力がずっと放出されていて、至る所で爆発や炎が起こっている。それは無作為に行われていて、綺麗に避けることは難しい。
その所為で身体の至る所に軽い傷が付く。
投げた氷の槍は、普通に避けられてしまった。
門番は、分かりやすく強い魔法を準備し、シアナに大きな火の玉を放ってきた。
氷の壁を三枚貼り、ギリギリで防ぐ。流石に一気に三枚も貼るとなると疲労が溜まるし、もう魔力はだいぶ使っている。シアナは息切れを起こして、過呼吸になっている。
それに対し、門番はあれだけの魔力を放っているのに平然としている。
もう辺りの木々は燃えて灰になっているか、爆破されて吹っ飛ばされているか、凍えているかのどれかだ。もうだいぶ開けた場所になっている。
「殺…して…やる!」
もう完全に理性を失っている。人間の感情というのは時に自分をも滅ぼしてしまうみたいだ。
シアナたち魔族も感情は持っているが、人間よりは感情の起伏は小さい。種族によって差はあるが、どの種族も人間ほどの感情は持ち合わせていない。
門番はもう、殺すことしか考えていない。シアナに向けて闇雲に魔法を放っている。
「うぅ、傷に響く…」
軽い傷だったとしてもそれ一つ一つの痛みがある。その痛みにも耐えて、魔力の枯渇寸前による疲労状態にも耐えて、大きな傷の痛みにも耐えている。
なぜこんなにも忍耐強くいられるのか。
それはムイラに、約束したからだ。
「ムイラちゃんは私が守る。」
その強い決意が、自身を奮い立たせているのだろう。
ムイラはもう、木の後ろに隠れるしかできない。そこの威圧感に耐えられないのだ。溶けていく体の痛みに耐えられないのだ。ムイラは、この状況もトラウマになっている。もう、不甲斐なさとか考えられない。単純な拒絶だ。
無理。
ムイラは人間を受け入れることができなくなってきている。
シアナはそんなムイラの許に近づいて、少しでも安心できるように気配りをする。
門番の攻撃は次第に弱くなっていき、ついには倒れて動かなくなった。シアナはもうボロボロだが、ムイラを守り切った。
白くて薄く青い服はもうボロボロで至る所が焼けていたり、破れていたり、血がついていたりで、新しくしないともう使えないような状態だった。
だが、シアナはまだ安心しきっていない。
途中で感じた魔力の流れ、あれは超強力な魔法を打つために魔力を送っていたのだろう。
まだ姿を見せない魔法を使う部隊がいる。
シアナは感覚を研ぎ澄まして、魔力の集まる場所を感じ取る。きっと魔力波を遮断したはず、ならば不自然に魔力波が無い場所があるはずだ。
「そこだ!」
氷の槍を発生させ、最後の力をふり絞り、魔法陣を打ち破る。貯めてあった魔力はその真下に急降下し、大爆発を引き起こす。
きっとこれで魔法部隊も全滅だろう。
これで、もう終わりだ。
「はぁ、はぁ、ね?ムイラちゃん、私が…守るって…言ったでしょ?」
ムイラは、どう反応すればいいのかわからなかった。ただ、ボロボロになりながらも守ってくれた。戦ってくれたことに、凄くかっこよかったと思うばかりだった。逆光で顔はよく見えなかったけど、笑っているようだった。
「もう、ここで眠っちゃおう。体力無いし」
そのままシアナはムイラにもたれかかるように眠った。シアナは、ムイラにとってヒーローだ。氷魔人という種族とは思えない程あたたかい身体に、ムイラももたれかかろうと思ったが、シアナの寝相が悪いことを思い出し、ちょっと離れた。
「シアナさん、かっこよかったよ、ありがと」
ムイラは、自分で言って恥ずかしくなって顔を隠しながらシアナとは逆方向を向く。
なんだか幸せな気持ちになったムイラは、そのまま眠った。
さっきまでの殺伐とした空気は、一気に浄化された。
人間でいるときには感じることができなかった幸福感を、ムイラは初めて感じることができた。
イザナギ「いやー、まさかGL展開になるとか…」
イザナミ「あの子、そんな気があったんんだ…」
ルイス 「やめてあげて」




