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お金物語 【01 ファンタジー】

 すぐに出ていきたくなるような家に出会うこともあれば、離れがたい家に出会うこともある。


 ずっとこの人のそばに居たいと思うような人に出会うこともあれば、一刻も早く離れたくなるような人に出会うこともある。

 僕たちは宝のような出会いやごみのような出会いを繰り返しながら、出世し、成長していく。


 成長すれば、見える景色も変わってくるはずだ。

 そう教えられている。


 でも、僕は疑っている。果たしてそうなのだろうか。出世すれば、見える景色はより美しくなるのだろうか。

 ほんとだろうか。


 出世して、成長して、大きくなって、その先に僕たちはどうなるんだろうか・・・




 その子は、とても頑張っていた。


 忙しく働く両親の手伝いをし、体に合わない大きなランドセルを背負って学校へ行き、待つ人のない家の鍵を開けて家に入り、宿題をして、両親の帰りを待つ。


 母の負担を減らそうと、掃除機をかけたり、風呂の掃除をしたり、時々は窓を拭いたりもしたりする。

 そして、夕方になると五百円玉を握りしめ、母親の幼馴染がやっている弁当屋に晩御飯を買いに行く。


 少年の手のひらの真ん中には大きな黒子がある。めずらしいことだ。

 この子は金持ちになる。思わず笑みが出る。金持ちになって幸せになってほしいと思う。


 今日、僕は少年に握りしめられて、家を出た。

 とうとうこの日がやってきた。


 ああ、勤労少年よ、さよならだ。元気にやれよ。


「今日は、えっと・・・」

「ひろちゃん、今日は日替わり弁当が酢豚でお得だよ」


「じゃあ、酢豚弁当!」

「はいよっ!」


 少年の手から女将さんの手に、僕は移される。

 バイバイ、少年。


 僕は少年の手の感触を忘れたくないと思うけど、それはきっと叶わないことなのだ。


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