タツオ 【01 ヒューマンドラマ】
よるとひるが逆になった生活を続けて半年。
暗い気持ちになることもまだ度々あるが、暗い海の底に沈みそうになったときは、僕は狭いワンルームの隅で丸まっているものに手を伸ばす。
「うにゃ」
相棒はつれない反応を示し、さらに体を丸め小さくなる。
僕はそこへ近づき、そのもふもふに鼻先をうずめる。
春の温かい陽で乾かされたさらさらの土のような匂いがした。
もふもふを拾ったのは三か月前。
会社を辞めて、転職活動してがダメで、引きこもって三か月が経とうとしていた頃だ。
新卒で入った会社で上司にいじめられた。その上司もさらに上の上司にいじめられていた。
だから自分のしていることを悪いこととは全く考えていないようだった。
我慢して我慢して三年勤めた会社を辞めた。若いやつはすぐに辞める。世間にそう思われたくないため、三年我慢した。
しかし、次の仕事は見つからなかった。我慢はスキルとして認められないようだ(当たり前だ)。
結果、望んだような仕事、前よりマシな仕事には就けなかった。いい大学を出てなければ、またブラックに飛び込むしかないのか。
バカらしくて投げ出してしまった。