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意識高い系男子の憂鬱 【01 恋愛】
「結婚しようか」
「え?」
久しぶりに会った疲れた顔をした恵梨香の顔が曇る。
なんだ、こいつ。
「だから、いいかげん結婚してもいいかなって」
恵梨香が黙り込む。無表情だ。
何を考えているんだか、さっぱりわからない。
何事もタイミングだと三十三歳の新之助は痛感した。
飼い犬に手を嚙まれるとはこのことか。
静かに新之助から視線を反らし、外を見遣った恵梨香の横顔を見て、新之助はため息をつく。
恵梨香の視線の先の街は、いつものような人通りもなく、暗く静かに沈んでいる。