エルフの国のギルドマスター
「そうか、大体の事はわかった」
裏から出てきたエルフの女は、このギルドのマスターだった。受付嬢のシャラが事情を話した。
シンヤ達は、ギルドマスターの部屋に案内され事情調査を受けていた。
流石にジョーククロウのメンバーは数が多いので、みんなは座れず、代表としてアリアとヒナタとサラが座っていた。
「自己紹介遅れた、私はジュン。先程言った通りここにマスターをやってる者だ」
ルナと同様の金髪、そして青い目のロングの見た目をして居る。
耳はルナより3倍ぐらいは長いだろう。
「私はアリアです。このパーティのリーダーを務めさせて貰ってる者です。私達から何もせずあちらからの一方的に絡まれた事実はご理解したのでしょうか?」
「ああ、周りに居た冒険者から聞いた。あいつらがアンタ達に恥をかかせようとしたと、聞いて居る。ここの冒険者として私から詫びよう」
ジュンは、アリア達に深く頭を下げた。
「なら、もう私達は依頼を受けても宜しいでしょうか?うちの子達がそろそろ我慢出来なくなって居ますので」
アリアはチラッとシンヤの方向に視線を移した。
はて?うちの子
お互い腹を抱えてる、シンヤとマナは見つめ合って。
誰の事なのか、視線で送り合って居た。
「あの〜ギルドマスターから、一つ依頼を受けて貰えないか?君達の魔力総量を聞いた上で是非やって貰いたい」
「...それって、今じゃないとダメですか?」
こっちは、早くこの部屋出て行きたいのに。
ギルドマスターからの、指名依頼で話が長くなりそうと思い。アリアは少し睨みつけて圧をかけた。
「報酬は必ず弾む。だから、お願いだ私達の国を救ってくれ」
ジュンはソファから立ち上がり深く頭を下げた。
国を救ってくれた言われ、アリアはしょうがない無さそうに、話だけを聞いた
「内容次第です。何をすれば良いのでしょうか」
ジュンは話を進めた。
依頼の内容は、最近元気が無くなった世界樹の調査と原因の排除だ、それとそして世界樹に栄養即ち魔力を与えること。
「おかしいですね。世界樹の管理はエルフの方しか出来ないのでは」
「...これから、話す事は絶対口外しない事を約束出来るか?」
「はぁ〜、訳ありですね。良いですよ」
「世界樹の管理は本来は誰でも出来る事なんだ」
その事実を聞いて、ルナは初めて知った様な表情になって居た。
「まぁ、誰でもって言ってるけど。君達も魔力総量を測ったよね?あれが300以上ないと世界樹に栄養を与えられ無いんだ」
後にアイから聞いた話しだが、魔力総量が300以上ある種族は、個人差があるが、ハイエルフ、上位精霊、龍神、上位天使、神族、上位魔族、悪魔族だそうだ。
エルフしか管理出来ないのは、どの道嘘でも無い。
「最近ハイエルフ達が、あまり補給してくれない事が多く。世界樹が元気が少しずつ無くなってるのだ」
「何故ハイエルフ達は補給しないのですか?一応この国の民なんですよね?」
「私達のハイエルフは、プライドが高い奴が多くて。最近、この国の長の娘が出て行ったきっかけで、元気が無くなって居たんだ。だから、代理人のロトロキが代わりに務めたの良いんだよ」
ギルマスはその娘がルナとは知らずに話してしまった、世界樹が元気を無くしてるせいなのは自分だと知ったルナは元気が無くなってしまった。
シンヤは、慰める為に無言でルナの手をギュッと握った。
「だが、そのロトロキが生意気で、しょっちゅう他のハイエルフと口論して居たんだ。そのせいか、嫌気を刺したのか、ロトロキの命令を無視して、世界樹の栄養を与えてる者が少なくなってしまったんだ」
「その、ロトロキは誰かは知らないですが、何故代理人になる事を誰も反対しなかったのですか?」
ルナも、その理由を知っており。2人はどこか思い詰めたような深刻な表情になって居た。ジュンは話を続けた。
「現長様の娘の夫にあたる人物だからな、次の長と言われる程偉い奴なんだ。だから、代理人になる事を誰も反対出来なかった」
アリアは受けるか受けないか、シンヤの方に視線を送った。
ルナが自分のせいでみんなに迷惑をかけて居た事が分かって、それを自分で解決したいと手を少し強く握って、シンヤを見た。
シンヤは、分かったと小声で言ってアリアにオーケーサインを送った。
「分かりました、その依頼を受けます」
「ありがとう!」
「ただし、条件が一つあります」
「何でも言ってくれ。出来る限り答える」
「私達が指名依頼を受けた事を内緒にして下さい」
「え?そんな事をしたら、君たちの功績に残らなくなり。ランクが上がらなくなりますぞ?」
何故アリアが、指名依頼を受けた事を内緒にするかと言うと、ジョーククロウは指名依頼を受けないと有名なパーティだ。
指名依頼を受けたと世間に広まれば、他の偉い奴が何故あいつらの指名依頼を受けたのに、俺達の指名依頼を受けないんだと、言う輩が現れる事を防ぐ為だ。
「確かに私達は冒険者です。ですが、功績やランクは正直言って興味が無いのですよ。目標も達成しておりますし」
アリアが言う目標とは、シンヤがAランク以上になり。
一夫多妻制を認めさせる事だ。
「分かった、約束しよう。これは、裏の指名依頼として手続きを進める。だが、前から気になって居たが、何故指名依頼を受けないんだ?そちらの方がランクは上がりやすかったのに」
「そんなのは簡単ですよ。私達は全員ではありませんが貴族が嫌いなのですよ。ほら、このパーティの女陣営の顔を見れば分かるでしょ?」
「あーー」
ジュンはリン達の顔を見渡すと納得した。
「私達の夫は、すごく過保護なので。絶対問題が起こるのですよ。それを、避ける為です」
「成る程、事情は分かった。必ず君の条件を約束しよう」
話が終わり、ジュンが手続きを終えて。
部屋から出ようとした。すると、ルナがジュンに向かって頭を下げた。
「ギルドマスターさん、私のせいで迷惑かけてしまってごめんなさい」
「え?!ちょっと待って!何の事だ??」
ジュンはまだ、ルナが現長の娘と知らずいきなり謝罪を受けた事に対して、驚いて居た。
「私はこの国の巫女です」
「...そうか、君がルナか。帰って来たんだね...良かった」
ルナが自分の正体を告白すると、ジュンは意外な答えが帰って来た。
「私の我儘のせいで、世界樹が元気無くなったのですよ。私のせいで、この国を迷惑かけたのですよ」
「それがどうしたの?例え貴方が私達に迷惑をかけたとしても、この国の子なんだよ。みんな家族なんだ、例え自分の子じゃ無くても子供の過ちを許さない親がどこに居る?帰って来ただけで、私は嬉しいよ」
ジュンがそう言うと、ルナは自然に涙を零した。
泣いてるルナの涙をジュンは優しく抱きしめて、涙を拭いてあげた。
ルナは小声で感謝と気持ちを伝えた。
「ありがとうございます」
「そうか、帰って来てたのか。だから最近の長は元気を取り戻してたのか。お帰りルナ」
「はい、ただいまです」
ある程度ルナが落ち着いたら、笑顔で再び感謝の言葉を送って頭を下げた。
「ルナとは初めて会ったけど、なかなか良い笑顔をしてるな。あいつと結婚するのも勿体無い。今から私が口論してこようかな」
「いえ、それの事でしたら大丈夫ですよ。結婚破棄しましたから」
「そうか!それは良い事を聞いた。あははは、今日の酒は美味く飲めそうだ」
それを聞いたジュンは、本当に嬉しそうに笑った。
ルナが、チラチラとシンヤを見てた事に気づいて。茶化す様に言った。
「そうか、ロトロキより、良い男を自分で見つけて来たんだね。あいつと付き合えるといいね」
「...もう、付き合ってます。耳も触らせました」
「そうか!それは良い事だ」
そして、シンヤ達はギルドから手配された馬車に乗り。
世界樹に向かって行った。




