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021 だんだん中二病少女の扱いが分かってきました

「ち、ちょっと待ってよ……! あたしがこんな女と合体メルトするってどういうことよ!? だってあんたたち二人とも結婚アグリーしているんでしょう? 出来っこないじゃないのよ、そんなこと!!」


「出来ます。ユウリのユニークスキルである【一夫多妻イクスチェンジ】は、複数の行使者アーマーと同時に結婚が可能なのです。私とユウリの合体が解かれた以上、あの怪鳥を倒すにはこれしか方法がありません」


 喚く中二病少女に冷たく言い放つシャーリーさん。

 ……あれ? なんか若干シャーリーさんも機嫌が悪い気がするけど、気のせいかしら……。


「で、でも、私まだ処女ソリッドなのよ? いくら緊急時だからって、あんな岩陰で、しかも相手がこんな女なんて……」


「もしもソフィアさんが無理だと仰るのであれば、私があの怪鳥と戦いますわ。そこで時間稼ぎをしますので、ユウリは彼女を連れてこの場から逃げてください」


「た、戦うって……。行使者アーマーがボスモンスターと戦って勝てるわけがないじゃないの……。あんた、死ぬつもりなの?」


 中二病少女の声が震えています。

 シャーリーさんは彼女の質問には何も答えず、ただじっと目を見つめるだけです。

 急に人生の選択を迫られた彼女は泣きそうな顔で一瞬だけ私と目を合わせました。

 そして一気に赤面し、再び顔を逸らせてしまいます。


「……シャーリーさん」


「ええ。無理そうですわね。ではユウリは彼女を連れて逃げる準備を――」


「……ってやるわよ」


「へ?」


 真っ赤にした顔を伏せたまま、中二病少女が何かをボソボソと呟きました。

 もういい加減怪鳥も待ってくれなそうなので、どちらにせよ行動をしないといけないところなんだけど――。


「やってやるわよ!!! あたしにだって行使者アーマーとしてのプライドくらい、あるんだから!!」


 顔を上げ、そう叫んだ中二病少女。

 ……もう、さすがに名前で呼んであげよう。彼女も覚悟を決めたのだから。

 『ソフィア・レッドアイズ』――。

 私の二人目の行使者アーマーとなる……少女。

 ……うん。

 どうして二人目も、女の子なんだろう……。

 しかもまだ十六歳の少女って……。


『ギョギョギョエエェェェ!!』


「! 来ます! それではユウリ、セフィアさん! よろしくお願い致しますわ!」


 私とセフィア目掛けて急降下してくる怪鳥。

 それと同時にシャーリーさんは藁人形を地面に叩きつけ、藁人間ストローマンを召喚します。


『ギョエ?』


「今です! 走って!!」


 下降中に軌道を変えた怪鳥を確認したシャーリーさんは私達にそう叫びました。

 それを合図に私とセフィアは岩陰まで全力で走っていきます。


「か、河原で短距離走とか、めっちゃキツい……」


「ちょっと! しっかりしてよあんた! それよりも怪鳥は?」


 岩陰までどうにか走り切った私達は後ろを振り返りました。

 どうやら作戦通り怪鳥のターゲットは再び藁人間ストローマンに切り替わったみたいです。

 藁人間から少し離れた場所に立っているシャーリーさんもオーケーの合図を出してくれました。

 ……後は藁人間のヘイトが切れる前に、セフィアと初夜を済ませるだけ。


「…………」


「…………」


 ――沈黙。

 二人ともどうして良いか分からずに、ただ口を閉ざしてしまいました。

 アカン。どうしよう。

 前回の初夜は完全にシャーリーさんがリードしてくれてたからすんなり(?)行ったんだけど、今回は相手が十六歳の処女……。

 どう考えても人生の先輩である私が彼女をリードしてあげないといけないんだろうけど……。


「な、何黙ってんのよ。……脱ぐんでしょう?」


「へ? あ、そうだね。脱ごうか」


 セフィアに促され、微妙な空気のまま私達はお互いに背を向けて衣服を脱ぎ始めました。

 時間も迫っているからモタモタしていられないのは分かってるんだけど、どうにもやり辛いです……。


「……脱いだ、わよ。これで、いい?」


 真っ白な肌を露出したセフィアは両手で全身を隠したまま私を振り返ります。

 まだ幼さの残るその身体は処女らしく、張りのある、透き通った肌をしております。

 ……羨ましい。私にもこんなピチピチの時代があったはずなのに。

 やっぱ歳には勝てないのかな。でもシャーリーさんは私と一個しか違わないのに肌もめちゃくちゃ綺麗だしなぁ……。


「つんつん」


「ちょ、なに勝手につついてんのよ! ふざけてないで真面目にやってよ、もう……!」


 とりあえず指先でセフィアの二の腕あたりをつついてみました。

 うわ、さすが十代の肌。プリップリ。羨ましすぎる。


「あ、そうだ。合体する前に、ステータスを見せてもらわないとね」


「……へ?」


 私はそう言っておもむろに右手を伸ばします。

 そして遠慮なく彼女の胸を掴みました。


「!!? な、な、ななな……!!?」


 そのまま後ろに飛び退くセフィア。

 すごい弾力のある胸の感触が私の右手に残ったまま、眼前にはセフィアの行使者アーマー情報が浮かび上がってきます。



----------

【Rare】 HR 【Name】 セフィア・レッドアイズ 【AB】 火 【SL】 0/100

【AT】 攻撃魔術型ウィッチストライク 【CH】 この紅き眼の力にレッドアイズタイム・ひれ伏せよグロウダウン

【ADT】 蛇炎術杖スネイクフレイマー 【DDT】 魔術礼装マジックドレス

【HP】 0/755 【SP】 0/87 【MP】 0/255

【ATK】 0/65 【DEF】 0/45 【MAT】 0/270 【MDE】 0/235

【DEX】 0/80 【AGI】 0/65 【HIT】 0/51 【LUC】 0/48

----------



「へー、HR(ハイパーレア)なんだぁ。属性は火で、見た目通り魔術系少女……。……いや、秘奥義の名前……」


 この紅き眼の力にレッドアイズタイム・ひれ伏せよグロウダウン――。

 完全に中二病ネームやんか……。


「あ、あんた……! 人の胸勝手に触っておいて、そんなに平然と――」


「だって仕方ないじゃん。胸触んないとステータス見られない仕様なんだから」


 セフィアの言葉をぶった切った私は彼女を無視して分析を続けます。

 やっぱシャーリーさんと比べちゃうと明らかにステータスが全体的に低いです。

 属性も火だし、熟練度も当然まだゼロだから、これから初夜を迎えて合体したとしても、果たしてあの怪鳥とまともに戦えるのかどうか……。


「さっき怪鳥に与えたダメージが確か235だったから……。ええと……あ、まだ合体してないから自分じゃ見れないのか。ちょっとセフィア。もっかいこっちに来て」


「な、何よ……。もう、始める気……?」


 何故か髪型を気にしているセフィアは、ちょっと上目遣いでゆっくりとこっちに近付いてきます。

 いや、いらんから。そういうの。

 何か勘違いしている人が多そうだから改めて言っておくけど、私、全然女の子に興味なんて、これっぽっちも無いからね。

 運悪く、立て続けに女の子と合体することになっちゃってるだけで、私個人としては早く男の子と情熱的で淫靡的な合体をしたいわけで――。


「き、来たわよ。……どうするの? あれでしょう? まずはお互いに見つめ合って、き、キス、とか……」


「モミモミ」


「ひぃえぇぇっ!!?」


 私は再び遠慮なく、今度は左手でセフィアの胸を揉みました。

 彼女の瞳を通して怪鳥の現在のステータスが上空に映し出されます。



----------

【Rare】 SSR 【Name】 鵜飼怪鳥フィッシングバード☆ 【AB】 天 【SL】 100/100

【MS】 鳥類型 【NDA】 棘のある翼、鋭利なクチバシ、毒針 【RDA】 彫金魚アクセフィッシュ

【HP】 263/498 【SP】 82/128 【MP】 23/35

【ATK】 115/115 【DEF】 140/140 【MAT】 87/87 【MDE】 55/55

【DEX】 42/42 【AGI】 90/90 【HIT】 76/76 【LUC】 23/23

----------



「残りのHPは263か……。やっぱ倒せる気がしない……。シャーリーさんは一体、私とセフィアを合体させて、どうやってあの怪鳥に勝つ気でいるんだろう……」


 私は腕を組み考え込みます。

 藁人間ストローマンに攻撃を当て続けさせてSPとMPの枯渇を狙う作戦……?

 いやでもそれじゃいずれヘイトが切れるし、こっちが一撃でも喰らったら即終了。たぶん即死。

 セフィアが魔法職だから、魔法攻撃を仕掛けて相手の低い魔法防御を搔い潜らせて、地味にダメージを与えていく……?

 いやそれも熟練度の関係でそんなにセフィアの魔法攻撃力も上がらないだろうし、そんなことをしている間に反撃されて、それも即死。

 そもそも怪鳥の素早さが90もあるから、普通に攻撃しても当たらない気がするし……。

 うーーーーん……。


「分からん。まあ軍師はシャーリーさんだから、信じて任せるしかないね。じゃ、セフィア」


「なにが『じゃ、セフィア』よ!! 二回も人の胸触っておいて、その後放置とか、あんた放置プレイされた側の気持ちになったことあんの!?」


 さっきから顔を真っ赤にしてまくし立ててくるセフィア。

 ……うん。なんかだんだん彼女の扱い方が分かってきた気がする。

 でもさすがにもう、これ以上焦らすわけにはいきません。

 さっさと合体してシャーリーさんの元に向かいましょう。


「ふーん、セフィアは今のが『プレイ』だって、そう思ったんだ」


「――っ! 違っ、そういう意味じゃ……!」


 私は視線を彼女に向けにじり寄ります。

 やっぱ攻め側は良いよね。

 いつも相手がシャーリーさんだったから、泣く泣く受けに回るしかなかったけど。

 相手は中二病の小娘。

 三十路前にもなる私がこういうシーンで後れを取るわけにはいきませぬ。


「ほうら、目を閉じて。そして心を開くのです」


「な、なんかの宗教みたいなことを言わないでよ……。あ……」


 そっと肩に触れ、そしてそのまま腕に触れます。

 まだ全身が強張ったままの彼女を諭すように、私は全身を優しく撫でてあげました。

 ちょっとずつ肩の力が抜けてきたのか、セフィアは私に身体を預けるようにもたれ掛かります。

 私は彼女をそっと抱きしめ、その長くて柔らかい髪の匂いを嗅ぎました。


「う……あ、ん……」


 セフィアの熱い吐息が耳に掛かり、私は少しだけ顔を上げました。

 それに合わせて彼女も顔を上げ、潤んだ瞳で私の目を見つめます。


「……セフィア……」


「う、うん……」


 私が彼女の名を呼ぶと、ゆっくりと目を閉じます。

 そして私は彼女の顎にそっと指を添えました。

 少女の艶のある唇が私の唇を求めるように少しだけ上を向きます。



 ――そして、私は彼女の求めに応じ、唇を重ねたのでした。




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