表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

15/39

012 モンスターとも結婚できるって聞いて若干引いてます

『ピギィ! ピギギィ!!』


 私を威嚇するようにジグザグに動いて突進してくるオルビススライム。

 それをギリギリのところでかわし、ダメージを喰らわないまま私は体制を立て直します。


「い、意外に速いじゃないの……」


『落ち着いて、ユウリ。相手は今のような突進攻撃ラッシュアタックか跳躍からの下降攻撃ディセントアタック、それとカウンターの一種で分裂後の挟み撃ち攻撃ピンショットアタックの三つしかありません。挟み撃ち攻撃ピンショットアタックを喰らうと一定時間拘束されてしまい、徐々にHPも削られてしまうので要注意です』


「うげぇ……。もしかしてこれ、逆にストレスが溜まっちゃう感じかも……」


 やっぱり村から一歩でも外に出れば、そこはモンスターが徘徊する危険地帯というわけだ。

 確かに広報新聞社ニュースペーパーギルドの記事でも、一般人がスライムの被害に遭う内容とかも良く見かけるし……。

 まだ熟練度が浅い状態で舐めてかかると痛い目に遭うのは私という証拠……。


『今度は胸に左手を当てたまま相手を凝視してください。そうすることで行使者アーマーの経験値に依存して、モンスター情報が上部に開示されます』


「え? マジで?」


 シャーリーさんに言われた通り、私は左手を胸に当ててオルビススライムを注視します。

 すると一瞬だけ視野が若干暗くなり、オルビススライムのちょっと上空あたりにステータスが表示されました。



----------

【Rare】 N 【Name】 オルビススライム(黄) 【AB】 雷 【SL】 100/100

【MS】 スライム型 【NDA】 ベトベトした液体 【RDA】 オルビススライムのコイン

【HP】 10/10 【SP】 6/6 【MP】 2/2

【ATK】 13/13 【DEF】 10/10 【MAT】 6/6 【MDE】 5/5

【DEX】 7/7 【AGI】 11/11 【HIT】 4/4 【LUC】 9/9

----------



「うわー……。また細かく……」


『モンスターには行使者アーマーのようにアーマータイプやドレスタイプ、秘奥義という項目はありません。その代わりにMS|(モンスター系統)、NDA(ノーマルドロップアイテム)、RDA(レアドロップアイテム)という項目が追加されております』


「あ、そうか。そのドロップアイテムを売って、HDに変換できるってことね。……ていうか、どうしてSL(熟練度)の項目もあるの……?」


 ステータスを確認し、胸から手を放そうと思っていた私はSLの表示を二度見しました。

 モンスターは行使者アーマーじゃないんだから、熟練度の項目とかいらないんじゃ……?


『実は……使役者ヒューマンの中には、その、モンスターと合体メルトをする変わった方達もおりまして』


「マジで!? え? じゃあ結婚できるってこと? モンスターと?」


『……はい、一応は。ですが相手はモンスター。行使者のように意思疎通は難しいので、そこでレアアイテムであるモンスターのコインが必要となってきます』


 そこでシャーリーさんは簡潔に、使役者ヒューマンとモンスターが結婚して合体する方法を説明してくれました。

 ていうかまだ戦闘中なんだけど、何故か都合良く相手のスライムが立ち止まったままでいてくれているし……。まあそこはいいか。空気が読めるスライムってことで。


 で、簡単にまとめると結婚条件は以下のような感じです。


①モンスターを討伐後、稀にドロップするレアイテムの『モンスターコイン』を百枚集める

②コインを結婚式場ユニオンに持って行き、神父さんに祝福してもらう

③その後もう一度モンスターと戦い、討伐後、『モンスターが起き上がり結婚したそうな目で見つめています』の状態になったら完了


「け、結婚したそうな目で見つめてくるモンスター……」


『はい。もはや愛に種族やモンスターは関係ないということですね』


「いやいやいや。結婚するまでに何千回もぶっ倒すってことじゃん、そのモンスターを……」


 一体このハートルディアの世界はどうなってるのでしょうか……。

 どう考えても狂気の沙汰として思えないんですが……。


『ですが、それだけの苦労に見合う性能も、当然ありますわ。モンスターとは愛を育めない代わりに、スキルレベルはMaxで固定されております』


「あ、そうなんだ。じゃあめっちゃ強いモンスターを狩りまくって、そいつのコインを百枚集めたら、最初から強さがMaxの状態で合体できると。へー……。それは強い、のかも?」


 首を捻って考える私だけど、本当に苦労に見合うのかどうか疑問しか湧きません……。

 わざわざそこまでしてモンスターと結婚するなんて、頭のおかしい人しかいないんじゃなかろうか。

 もしくは偏愛主義者、とか。人外になってみたい変人、とか?


『ピッギギ!! ピギッギィ!!』


「あ、スライム怒ってる。ごめんごめん、待たせちゃって」


 さすがのオルビススライムも放置プレイにおかんむりみたいです。

 じゃあちゃちゃっと続きの戦闘を始めちゃいましょうか!


『オルビススライムは素早さと運が少し高いので、こちらからの攻撃は回避されてしまう可能性がありますわ。ここは相手の跳躍からの下降攻撃ディセントアタックを誘って、攻撃後の硬直中に一撃で仕留めるのが宜しいかと』


「うん。やってみようかそれ」


 シャーリーさんの提案に乗った私は一旦剣を鞘にしまって後ろを向きます。

 そしてお尻を振りながらスライムを挑発してあえて怒らせる作戦をとります。


『ピ……ピギャアアァァァ!!!』


「うわめっちゃ怒った! 跳んだ! すっごい叫びながら跳んだ!!」


『来ます……! ユウリ、避ける準備を!』


 鬼の形相(?)のオルビススライムは天高く跳躍した後、私に狙いを定めて急降下してきました。

 私、相手を怒らせることに関してはラロッカ村一の能力者かもしれないよね……。

 挑発作戦、いいかも。私に向いてるんじゃなかろうか。


「来た来た来た来た!! …………避ける!」


『ピギ!?』


 そのまま地面に激突したオルビススライムは対象を見失って硬直しています。

 ニヤリと笑った私はそのまま魔剣ディアブロスを抜き、その刃先を軽く舌舐めずりします。


「もらった!!」


『ピギャアアアァァァァ!!!』


 魔剣、一閃――。

 真っ二つに斬り裂かれたオルビススライムの頭上には金色の大きな字で『21』というダメージ表記が出現しました。

 確か金色はクリティカルヒットの意味だったかな。完全なるオーバーキル。

 そして間を置かずにボンっという小気味の良い音がして、スライムは消失。

 その場に残されたのはノーマルドロップアイテムの『ベトベトした液体』です。


「……どうやって持ち帰るの? この汚い液……」


『大丈夫ですよ。触れた瞬間にアイテムとして行使者アーマーの所持品欄に収められます。その他モンスターから獲得したアイテムやフィールドから採取した素材なども同様ですので、制限時間まで目一杯集めていきましょうね』


 シャーリーさんのアドバイスでほっと息を吐く私。

 ていうかやっぱ、シャーリーさんと結婚して今私って最高の状態なんじゃないのこれ。

 熟練度はなかなか上がらないかもしれないけど、もはや知識チートの気がしてきた……。



 ――そんなこんなで制限時間いっぱいまでスライムを狩りまくった私でした。




〇モンスター系統(全十一種)

【スライム型】世界各国で最も多いモンスター型。ドロップコイン有り

【自然型】世界各国でよく見られるモンスター型。ドロップコイン有り

【魔獣型】ザザンカ獣人国に出没することが多いモンスター型。ドロップコイン有り

【昆虫型】世界各地で発見されているモンスター型。ドロップコイン有り

【機械型】ゴルディアス帝国に出没するモンスター型。ドロップコイン無し

【巨竜型】オルビス皇国の郊外で稀に出没するモンスター型。ドロップコインは不明

【悪魔型】ルーラン妖精国に出没するモンスター型。ドロップコイン有り

【天使型】ルーラン妖精国に出没するモンスター型。ドロップコイン有り

【死霊型】かつて世界を支配していた魔王が指揮していたモンスター型。ドロップコインは無し

【鳥類型】ベオウルフ連邦国とレべリア共和国でよく見かけるモンスター。ドロップコイン有り

【特殊型】未だ存在が把握されていないモンスター。ドロップコインは不明

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ