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008 合体したら予想以上に凄い装備でビビっちゃいました

 ――脳内に色鮮やかな曲線が描かれていく。


 様々な幾何学模様や数式が視界一杯に羅列し、それらが複雑に絡み合い結合する。

 二重螺旋となった数式の鎖は転写され、爆発的に数を増やしていった。


『――ユウリ』


 シャーリーさんの声が聞こえる。

 それは耳から聞こえるというよりも、私の脳内に響いていた。

 彼女の透き通るほどの白い腕が私に向かって伸び、それに合わせて私も手を伸ばす。

 手と手が触れ合い、その瞬間に数式の螺旋は私の視野ごと反時計回りに回転し、全てが溶けて、混ざっていった。


「……ん……」


 ゆっくりと目を開ける。

 まだ視界がぼやけているが、いつの間にか私はシャワー室を出てリビングルームに立っているようだ。

 徐々に視界がはっきりとし、私は周囲を見回す。

 しかしどこにもシャーリーさんの姿は見えない。


「……シャーリー、さん?」


 擦れた声で彼女の名を呼ぶ。

 まだ何が起きたのか理解できない私に、漠然とした不安が襲い掛かってくる。

 だがそれをすぐに打ち消すかのように脳内にあの優しく透き通った声が響き渡った。


『ふふ、【合体メルト】、成功ですね。おめでとう、ユウリ』


「これが……【合体メルト】」


 直接脳に響き渡るシャーリーさんの声は心地良く、そして手に取るように彼女の感情が伝わってくる。

 【使役者ヒューマン】と【行使者アーマー】。

 古よりこのハートルディアの世界に伝わる、二つの種族の愛の物語――。


「……ていうか凄い!!! なにこの超格好いい黒一色の装備品!!!」


 今更ながらに自身の姿に気付き、驚愕する。

 私の全身を覆っているのは漆黒の皮鎧のようなドレスだ。

 一見動きにくいように見える鎧だが、これが驚くほど軽い。

 そして両の腰に差さっている剣。

 私は恐る恐るそのうちの一本を抜いてみる。


『それが魔剣ディアブロスですね。もう一本のほうは神剣ゼクスブレイバーといいます。それぞれ【光属性キラー】と【天属性キラー】が付与されている世界最強レベルの武器の二つですね』


「チートやん!! もう完全に無双やんそれ!!!」


 あまりにもビビり過ぎてつい魔剣を床に落としてしまいました。

 そしたら綺麗に真っすぐに床に突き刺さっちゃった……。

 怖い。切れ味が良すぎて、触るのもちょっと嫌です……。


『私は闇属性ですからね。弱点である天属性に唯一勝てる見込みがあるとすれば、その神剣だけですから』


「……いやいやいや。弱点無くなっちゃったら本当に強すぎて、色んな方面から命を狙われそうで怖いんですが……」


『ふふ、それは大丈夫ですよ。先ほどもお話した通り、私は厄介者扱いをされた行使者アーマーですから。私を使いこなせる使役者ヒューマンがこの世にいるとは、誰も思っていないでしょうね』


「ふーん、そんなもんなのかぁ。でもこれでようやく職業紹介所ギルドマスターに仕事を紹介してもらえるよね。長かったなぁ……ニート生活。これでやっとモヤシ生活から解放される……うわっ!」


 急に安堵感に襲われた私は、何故か足元がふらついてソファに転げます。

 え? なにこれ? 急に力が抜けて――。


 そして突如、全身から強烈な光が発せられました。


「まぶし!!! え!? なにこれ!?」


 強烈な眩暈。そして世界が時計回りにグルグルと回転します。


「……ふう。まあ、初夜ファーストメルトですから、こんなものでしょうね」


 いつの間にか目の前にシャーリーさんが立っています。

 何故か彼女もちゃんと服を着ていて、裸じゃありませんね。

 ……まあ別に裸を期待していたわけじゃないんだけど。


「あービックリしたぁ。もしかして合体メルトって、制限時間とかもあるの?」


「ええ、その通りです。そのあたりも愛の育みスキルアップを通じて熟練度を上げて行けば、思いのままに調整することも可能になります。ですが、一旦合体が解除されてしまうと、次に合体をするまでに準備時間クールタイムが発生します。ですので、もしも戦闘中に合体が解除されてしまったならば、すぐにその場から逃げるしか方法がありませんのでご注意くださいね」


 そう言ったシャーリーさんも私と一緒にソファに座り込みます。

 そして私に満面の笑みを浮かべてきました。


「……ちなみに、その、初夜って、これで終わり?」


「? はい。そうですが……。他に何かすると思ったのですか?」


「いやいやいやいや!!! 決して!! 断じてそんなことは、これっぽっちも考えていませんから!!!」


「……??」


 顔が真っ赤に染まった私はそのままそっぽを向きます。

 やばいやばいやばい! これは超恥ずかしい……!!

 何勝手に一人でいやらしいことを考えて、盛り上がってたんだろう私は……!!

 ……あれ? もしかして私、実はそっち・・・の気がある……?


「…………」


「もうだいぶ遅い時間ですね。今夜はこれくらいにして、身体を休めましょう」


「う、うん……。そだね……」


 ソファから立ち上がったシャーリーさんは寝室に向かって行きます。

 私は居候の身だから、このソファを借りてこのままここで寝るだけなんだけど――。



「……ヤバい。なんか興奮しちゃって寝付けない気がする……」



 ――というわけで。


 結局私は朝方まで悶々として眠れなかったわけでして――。




【魔剣ディアブロス】闇属性最強の曲剣。付与効果『光属性キラー』

【神剣ゼクスブレイバー】神属性最強の細剣。付与効果『天属性キラー』

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