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第八話 正式登録と再会

「へへへ……」


 リヴは昨日レヴィと一緒に風呂に入ったことを思い出し、鼻の下を伸ばしていた。


「あれ、どしたのリヴ。凄い変な顔してるよ?」

「いや!! 何でも無いっす! すんません!」

「えー、今の顔可愛かったのにー」


 急に顔をしゃきっと元に戻したリヴに対し、レヴィは頬を膨らませる。


 いや、レヴィさんの方が100万倍可愛いです……。


 リヴは朝風呂を済ませてバスローブ姿のレヴィを見ながら、心底そう思った。


「リヴ、お腹減ってる?」

「めっちゃ腹減ってます!!」

「あはは、じゃあ下の食堂に行こうか。このホテルのバイキング結構美味しんだー。私のお気に入り!」

「やったー!」


 ホテルという単語もバイキングという単語も分かっていないリヴだが、美味しいメシが食べられると分かったことで床から飛び上がり、その喜びを表現する。

 


「ガツガツガツガツガツ!!」

「あはは、そんなに勢いよく食べなくても食事は逃げないよ」


 バイキング形式の食事。

 当然それはリヴにとって初めての経験だ。彼は特に何も考えず大量の皿に大量の料理を積み重ね、それを食べていた。

 

「ガツガツガツガツガツ……ん?」


 三皿を軽く平らげたリヴ。そこで彼は自分が周囲から視線を向けられていることに気が付く。


 何だアイツら。俺のメシはやらねぇぞ……?


 リヴは自分の食事が狙われていると思い、体で机を隠そうとした。


「違うよリヴ。宿泊客の人は料理じゃなくてリヴを見てるんだよ」

「俺を? そりゃまたなんでっすか?」

「んー、リヴみたいなお客さんが珍しいからかな。ここ高級ホテルだしね」


 そう、レヴィの言う通りここは王都の高級ホテル。つまり、ここに泊まる客はほぼ全員が金持ちでありリヴのようなマナーを何も知らない者がいるのは場違いに他ならなかった。


「良く分かんねぇっすけど、とりあえずメシは取られないってことっすよね?」

「うん」

「ならいいっす!」


 そうして、周囲の視線に晒され続けながらもリヴは食事を続けた。



「ふぅー、美味かったー。そんで、これからどこ行くんすか?」

「今日はねー、冒険者ギルドに行くの!」


 あー、ラクトさんちがよく行ってた所か。


「何か用でもあるんすか?」

「うん! 私がテイマーとしてリヴをテイムしているってギルドに登録に行くんだー! 大きな魔物だったらギルドから職員が派遣されるんだけど、リヴは人型だから直接ギルドで登録しようと思って! あ、ギルドって言うのは各都や町にある冒険者が集まる場所のことね。それで今から行く所は王都のギルドだからこの国で一番か二番くらいに大きなギルドなんだよ」

「登録? 何すかそれ?」

「えーっとね、テイムされた魔物とか亜人って基本的に人として扱われないんだよ。けど、テイマーが申請を出して登録すると、その子たちもちゃんと人間扱いされるようになるってわけ。ま、わざわざ申請出すようなテイマーってあんまりいないけどね。多分リヴの前のテイマーも申請してなかったよ」


 うーん、そうだなぁ。ラクトさんたち多分俺を犬みてぇに扱ってたし、よく殴って来たし……確かに人扱いされてねぇな。

 

 リヴはラクトにテイムされていた頃を思い出した。


「っと、着いたよ」


 そうこうしている内にリヴとレヴィはギルドの建物前に到着した。


「さ、入ろ!」


 レ、レヴィさんの手柔らけぇ……!!


 あるじの手の平を堪能しながら、リヴはギルドへと足を踏み入れた。


 ざわ……。


 すると建物内に入った途端、周囲からざわめきが起こった。


「おい、あれレヴィじゃねぇか……!?」

「うぉ……マジだ!!」

「後ろにいるのは何だ? 髪白いし、魔物……だよな?」

  

 そして周囲の人間たちはそんなヒソヒソ話を始める。


 ん、何だ? メシの時よりも人に見られてる気が……。


 先程よりも明らかに多い視線を感じるリヴ。しかしその視線はリヴだけじゃなく、レヴィにも向けられているのを感じた。

 が、そんなことはお構いなしにレヴィは受付カウンターへと向かう。


「やっほーヒバナ!」

「レヴィ!?」


 レヴィは受付にいたヒバナという女性に軽快な挨拶をした。


「珍しいじゃない。アンタがギルドに来るなんて」

「えへへ、今日はこん子を登録したくてねー」


 そう言うと、レヴィはリヴを指差す。


「あーそういう。でも久しぶりね。アンタがテイムするなんて。何年振り?」

「二年ぶりくらいかな」


 そんな会話が始まり、完全に蚊帳かやの外になるリヴ。


 うお……この人も可愛い……! 美人には美人が集まるもんなんだなぁ……!


 しかしリヴはそんなことはどうでもよく、ヒバナの顔をじっと見ていた。

 やがて二人の雑談が終わり、


「じゃあ私、ちょっと人の奴らに挨拶してくる! リヴはここで待ってて! 申請登録はテイムされた本人がいないとダメだから!」


 レヴィはそう言い残すと、スタスタと階段を駆け上がり上に行ってしまった。

 彼女がいなくなったことで、二分にぶんしていた視線が一気にリヴへと集約される。


「ホンっとに相変わらずなんだから。大丈夫君? 変なことされてない?」

「え?」


 ヒバナは先程と同じ調子でリヴに話し掛ける。その様子に、リヴは動揺した。


「何? どしたの?」

「あの、俺のこと……怖くないんすか? 俺魔物なんすけど」

「はは、心配しないで。レヴィが連れて来た魔物なら、基本的に私は信頼してるから。さ、じゃあ登録するのに色々情報が必要だからこっちに来て」

「……」


 や、優しい……!! 魔物の俺をあっさり受け入れてくれた!! おまけに美人だし!! あーレヴィさんに拾われて良かったぁ……!! まさかこんな連続で美人に会えるなんて、俺は幸せだ!!


 リヴは最近何度目かも分からない『幸せ』を噛み締めた。



 ヒバナに案内された部屋でリヴは身長や体重、血液採取などをされた。これらはいずれも登録情報に必要なものらしい。


「ふぅ」


 登録作業が終わったリヴは、息を吐きギルドのロビーへ戻る。すると、


「はい。『魔奏遊』の出場申請ですね」

「あぁ、頼む」


 ――ん?


 リヴは驚愕すべき光景を目撃した。

 そこにいたのはリヴを契約解除し、挙句の果てには殺したパーティー『グラディアス』がいたのだ。


「何だと……!?」

「……嘘でしょ!?」

「な、何故あの魔物が……!!」


 そして、彼らもまた、リヴの存在に気付いた。


「おいどうしたお前ら」


 最後に、『魔奏遊』への出場申請を終えたラクトが、ユーゴたちの視線の先に目をやる。


「……は? 何で、てめぇがいやがる……!?」


 四人の中で最も信じられないといった表情をしたのはラクトだった。

ここまで読んでいただきありがとうございます!


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「続きが気になる」


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