第七話 【SIDEラクト】新たなテイム
リヴとの契約を解除して一週間が経過。
町のギルドで昇級手続きを終え、晴れてAランクとなったラクトたちパーティー『グラディアス』はある施設へと足を運んでいた。
そこは王都が運営している魔物の保管所であり、テイムが行われていない魔物が数多く拘束されている。
「こちらです」
保管所の管理を任されている使用人の案内を受け、ラクトたちは歩く。
そして、大きな扉の前に辿り着いた。部屋の中にいたのは、鷹の上半身とライオンの下半身を持つ魔物。
「これが……ランクA+のグリフォンです」
「おぉ!! これが……!!」
リヴとの契約を解除したラクトは、今後の戦いのための強力な魔物をテイムするためにここに来たのだった。
その点を考えると、グリフォンは非常に強い魔物であり、まさしくラクトが望んでいたものである。
「凄まじいな。見るだけで分かる。この魔物の強さが」
「そうね。どっかのゴミとは大違いだわ」
「あの神々しい鬣、そして翼。これこそまさしく私たち『グラディアス』に相応しい魔物です!」
ユーゴ、ロキシル、スラーナは口々にそう言った。
「よし! 早速儀式を始めるぞ!!」
そう言って、ラクトはグリフォンの周りを囲っている魔法陣に、自分の血を付着させる。
瞬間、魔法陣は光を発し始めた、
「グゥオォォォォォォォォォォォ!!!」
魔法陣から発された光はたちまちグリフォンを包み込む。グリフォンはそれに耐えられないというような叫びを上げる。
この儀式は魔法陣に血を流したテイマーが、魔法陣の内側にいる魔物をテイムするというものだ。そして、血を流したテイマーの実力が魔法陣内にいる魔物に釣り合っていなければテイムすることができない。
戦闘を行わず、端的にテイムを行うオーソドックスな方法としてこの儀式は知られていた。
「オォォォォォォォ!!!」
「……よし!! やった、やったぞ!!」
そうして、儀式は終了した。
ラクトはグリフォンのテイムに成功したのだ。
「よくやったラクト。まぁ今のお前ならグリフォンをテイムできると信じていたがな」
「サンキューユーゴ。今まではあのリヴのせいで足を引っ張ってたが、これからはその分を取り返す働きをしてみせるぜ」
「ふ、期待している」
ユーゴはラクトを祝福する。
「ねぇ、今回のグリフォンでどれくらい魔力の使用制限を食らったの?」
「あー、大体50パーセントってとこだな」
「へー! 全然いいじゃない! それなら私たちで魔力制限の分配をしなくてよさそうね」
「あぁ! けどまぁ、今回はどれだけ魔力を制限しようがお釣りがくるくらいの価値があるけどな」
「はは、それもそうね。ていうか、あのゴミの無能さが余計に露になったわ」
「全くだ。ただ頑丈なだけで戦闘力は皆無。ンな奴が俺の魔力を90パーセントも制限を掛けやがって……思い出しただけでもムカつくぜ。あー、また殺意が湧いてきた」
「殺意って、もう死んだじゃない」
「あー、そうだったそうだった!」
ロキシルはラクトと笑い合った。
「ラクト。それで、貴方はどの程度強くなったのですか?」
「ん、おぉそうだな。確かめる必要がある。外に出ようぜ」
スラーナの問いに答えるために、ラクトたち『グラディアス』は保管所の外へと出た。
「いくぜ……おらぁ!!」
保管所から少し離れ、開けた場所に到達したラクトたち。
ラクトは気合を入れるように拳に力を入れ、地面を殴りつけた。
すると、ドゴォォォォォン!! と激しい音を立て、地面がひび割れたのだ。
テイマーは契約した魔物の強さに応じて、自身の身体能力や魔法の威力が上昇する。今のラクトはグリフォンをテイムしたことによってその二つが圧倒的に上昇しているのだ。
「凄いです! グリフォンをテイムすると、ここまで強くなれるのですね……!!」
「おぉ!! かつてないほどに体に力がみなぎってるぜ!!」
はは……!! これだ、これが俺の実力!! 本当にあのゴミを捨てて正解だったぜ!!
リヴは身体能力も魔力も人並み、そのためラクトは彼をテイムしても身体能力や魔法の威力上昇という恩恵を受けることができなかった。
だが今は違う。グリフォンをテイムしたことで、彼は相応の力を手に入れたのだ。
ラクトは、ついこの間までの自分とは比較にならない程に自身が強くなったことを実感し、圧倒的な力の充足感に浸っていた。
「これなら、現最強のテイマー……レヴィ・ディザストに追いつくのだって夢じゃねぇ!!」
自分の将来に夢を馳せ、ラクトは拳を握り締める。
「お前ら!! この通り俺は本来俺が手に入れるべき力を手に入れた。そしてお前らも、あのゴミのせいで掛かってた魔力制限が解けた。今の俺たちに怖いもんはねぇ! そうだろ!!」
「あぁ。これならSランクパーティーになるのも時間の問題だ」
「当たり前じゃない! 私たちならなれるわよ!」
「えぇ! 不純物は排除され、洗練されたこのパーティーならば、いずれ英雄として名を残すパーティーになるのは間違いありません!」
リヴを捨て、強くなったことを実感し、笑い合う『グラディアス』の面々。
「とりあえずグリフォンのテイムも完了したし、これからどうする?」
「そうだな。まぁ早速Aランククエストに挑むってのもありだが……」
ユーゴの言葉に、ラクトは思案する。
「……そうだ! 確か王都が主催する『魔奏遊』っていう魔物を戦わせて最強の魔物を決めるっていう大会がある。そこでコイツの強さを確認してやるか。俺たちパーティーのアピールにもなるだろ!」
「確かに、名案だな」
「あの大会は毎年優勝賞品が豪華なので、それを狙うという意味でも良いと思います」
ユーゴとスラーナはそう言ってラクトの案に賛同した。
『魔奏遊』、出場資格はAランク以下の魔物もしくは亜人であり、次世代の強力な魔物や亜人……さらにはそれらを使役するテイマーを見出す大会だ。
「よし!! そうと決まれば王都に行くぞ!」
こうしてラクトたち一行は王都へ向かい、ラクトは魔物や亜人同士が戦い合う『魔奏遊』に出場する意思を固めるのだった。
この時、ラクト本人はおろか……その他のメンバーは思いもしていなかった。
――まさか王都でレヴィにテイムされたリヴと再会するとは。
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