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第四話 契約と実戦

 テイマーが行う契約には主に三種類ある。


 一つ目は、魔物とテイマーとの間で儀式を行い、テイマーが勝つ、もしくはテイマーが実力で魔物を従わせることで対象を使役させることができる『奴隷契約』。大体のテイマーがこの方式で契約を行っている。


 二つ目は、魔物自身が特に抵抗しなかった場合やテイマーと魔物の間で信頼関係が成立している場合に行われる『平等契約』。リヴとラクトの間に結ばれていたのはこの契約だ。


 そして三つ目は、テイマーが身の丈に合わない魔物と契約を行う場合に魔物側に代償を支払うことによって魔物を使役する『代償契約』である。


「私とリヴの間で結ぶのは『平等契約』! まぁ儀式の方法は色々あるけどー手っ取り早いのはこれかな?」


 そう言って、レヴィは自分の親指を噛み、血を流した。そして出血したその指をリヴの前に差し出す。 


「舐めて」

「な、舐める?」

「そ」


 リヴはレヴィの指を凝視する。自分の好きな人が指を舐めろと言っているこの状況。彼が取る選択は……。


「いただきます!」


 迷わず自身の口で彼女の指を包み込んだ。


「あはは! 舐めるだけでいいのに。そんなに私の指食べたかった?」

「ふぁい!」


 くちゅくちゅと音を立て、リヴは言う。


 うわ、うわぁうわぁ!! 何だこれ何だこれ!! 俺今レヴィさんの指舐めてる、舐めちまってる!! すげぇドキドキする!! レヴィさんの血が俺の中に流れ込んでる!!


「ちょ、リヴ! んぅ……!」


 やべぇ止まんねぇ!! メシじゃないのにレヴィさんの血すげぇ美味く感じる!! もっと、もっとレヴィさんを感じてぇ!!


「こらぁ!」

「いへっ!?」


 するとレヴィが頭にチョップを入れたことで、リヴは現実に戻って来た。


「全く、興奮し過ぎだよリヴ」

「す、すみません」


 うわぁ! やっちまった!! 嫌われたか? 嫌われちまったかなぁ?


 心配そうに恐る恐るレヴィを見るリヴ。だがそこまで怒っていない様子だったため、彼はほっと胸を撫でおろした。


「うぉ……」


 その時だった。リヴの体に奇妙な感覚が走る。それはラクトと契約を交わした時と似たような感覚だった。


「うん。よし! 契約完了だね」

「え、マジすか?」

「うん。マジマジ。これ見て」


 レヴィはリヴに手鏡を差し出した。自分の姿をまじまじと見る機会など今まで皆無だったリヴはそれに動揺するも、すぐに他の人との違いに気付く。

 それは自身の首についたマークである。


「それが契約の証。多分前のテイマーの時も似たような紋章が首についてたはずだよ。契約解除したら紋章も消えるけど。まぁ細かいことは置いといて、これで名実ともにリヴは私のモノ!」

「やったー!」


 リヴは普通に喜んだ。が、同時に思い出す。


『はぁ? そんなのてめぇに使う魔力がもったいねぇからに決まってんだろうが。一人で俺の魔力をアホみてぇに使いやがってよぉ!!』


 それは一週間前、ラクトに言われた言葉だ。


「あ、あのレヴィさん」

「ん、なーに?」

「今さら言うのアレなんすけど、俺をテイムしていいんすか? 俺ラクトさんに……前のテイマーに契約解除されたんすよ?」

「あはは大丈夫大丈夫。テイマーは契約で魔力の何割かが使えなくなる制約があるけど、私の魔力量すっごい多いから『ほとんど』問題無いよ」

「へー、それならいいんすけど」


 テイマーの契約事情を全く知らない、理解していないリヴは適当に返事をした。


「さ、それじゃあ早速実戦に行こうか!」

「……実戦?」


 聞き慣れない言葉に、リヴは首を傾げる。


「うん。リヴは今のままじゃ弱いから戦って強くなってもらいたいの!」

「つっても、俺剣も魔法も使えねぇっすよ? それに一人で魔物と戦ったこともねぇし……」

「あはは大丈夫大丈夫! その能力があれば、リヴは強くなれるよ! 下手したら、『最強』になれちゃうかも」

「『最強』……」


 すげぇ、何かカッコいい響きだ。


 リヴは「ふへへ」と不敵に笑う。 


「乗り気みたいだね。じゃあ行こうか!」

「行く? どこにっすか?」

「それは行ってのお楽しみ!」

  

 レヴィはそう言うとリヴの腕を掴み、家を飛び出した。


「ゴル爺ありがと! わざわざ呼び出してごめんね!」

「ふぉっふぉっふぉ。可愛いレヴィの頼みじゃ。何てことないさ」


 甲羅の上で礼を告げるレヴィに、ゴル爺は変わらず穏やかな調子で笑う。


「じゃ、送り返すね」

「あぁ。ぜひまた呼んでおくれ」

「うん!」


 そんなやり取りを経て、ゴル爺は煙のように姿を消した。足場を無くし、リヴとレヴィは落下する。


「っと」

「おぉう!?」


 レヴィは華麗に着地、対してリヴは両足を骨折する。が、瞬時に回復した。


「よし、こっちかな」

「ってうぉぉぉぉぉぉぉぉ!!??」


 レヴィはリヴの腕を掴んだまま、またもや大きく跳躍する。それは先ほどコル爺の甲羅の上に飛び乗ったものの比ではない。

 それよりももっと大きく、数百メートル先の地点にまで到達した。


「ここは……?」


 リヴはキョロキョロと辺りを見渡す。周囲には沼地が広がっており、巨大な草木が生い茂っていた。

 通常の森と似ているが雰囲気はどこか違う。


「カラクル湿地帯! とりあえず手軽そうな奴がいるとしたらここかなーって」

「へー」


 手軽そうな奴かー。なら俺でも一人で倒せそうだな。


 などとのんきなことを考えるリヴ。しかし、現実はあまりにも非情であった。


「あ、きたきた!」

「マジすか! うっし、見ててくれレヴィさん!」


 レヴィにいい所を見せたいリヴはそう意気込みながらレヴィさんが視線を向ける先に目を向けた。


 すると、こちらに向かってくる魔物の姿がある。


「ん、んん……?」


 その魔物の大きさ、全貌が露わになり、リヴは顔をひきつらせる。


「え、えーとレヴィさん……?」

「これがリヴの相手、ダイオウグソクトカゲ! 階級換算でAランクってとこかな! まぁでもリヴなら大丈夫! 期待してるよ!」

 

 そう言って笑顔を向けるレヴィ。

 そんな彼女を横目に、リヴは全長30メートル、足が10本ある巨大なトカゲの魔物を前に立ちすくんだ。


 そして、


「アアアアア!!!!」


 ダイオウグソクトカゲに丸呑みされた。

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