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第二話 アンデッドの少年、美少女テイマーと出会う

 ――アレ?


 ユーゴに断頭されてから約十分後、頭だけとなったリヴはぱちりと目を開けた。


「俺、死んだんじゃねぇのか……?」


 リヴが最後に見た光景はユーゴが放った一閃。その後リヴの意識は消失したはずだった。


「んー、まぁこまけぇことはいいか」


 あまり考えることが得意ではないリヴは、思ったよりもすんなりと現状を受け入れた。


 俺って頑丈だけど、まさか頭だけになっても生きてるとはなぁ。

 って、ンなこと思ってる場合じゃねぇか。何とかして頭と体をくっつけねぇと……。


 ――。


「え……?」

 

 リヴは今の自分の状態が理解できなかった。

 何故なら、首から下の感覚がある。腕が、足がしっかりと存在している。

 リヴは確認するように体を起こした。


「どうなってんだ?」


 自分の体をペタペタと触るリヴだが、触れば触るほどそれが自分のモノだと認識させられた。


「……」


 チラリと、リヴは右後方に目をやる。そこには自分の首から下の肉体、ユーゴによって分離させられたモノが残っていた。


「えと、つまりぃ……」


 ……。


「いや、とりあえず考えんのは止めよう。うん」


 誤魔化すように言いながら、全裸のリヴは立ち上がる。

 そしてビクリとも動かず倒れたままの肉体が着ている衣服をはぎ取り、着用した。


「とりあえず、これからどうすっかだよなー。ラクトさんのとこ戻っても意味ねぇ……っていうかまた斬られんのがオチだろうし」


 そう言って、リヴは「うーん」と唸りながら思案する。

 

「とりあえず歩くか」


 特に何も思いつかなかった彼はその場から移動することにした。



 ――グゥゥゥゥゥゥゥゥゥ

  

「うへぇ……腹減った」


 空腹によって鳴る腹をさすりながら、リヴは辛そうな顔をする。


「くっそぉ。いつもならメシ食える時間なんだけどなー」


 言いながら、彼はいつもの食事風景を想像する。

 リヴが食べているのはラクトたちパーティーが廃棄した残飯や露店で買える格安のパンが主だ。そして彼は人型の魔物であるにも関わらず、机の上で食べることを許されていない。食事の入った器が床に置かれ、そこに口を付けて食べるというのがリヴの許された食事スタイルである。


 が、食べられるだけで幸せだと考えていたリヴにとって、食事の内容や方式は特に気にしていなかった。


「おっ」


 森の中を歩いていると、リヴは木の根元に生えていたキノコを見つけた。

 食欲が限界にきていた彼はそれをむしり取り、かぶりつく。


「むしゃむしゃむしゃ……うーんマズいな。……っがぁ!?」


 咀嚼し飲み込むリヴは唐突に苦しみ出し、その場に膝をついた。


「あぁ……!! な、ンだよこれ……!!」


 体が震え、猛烈な眩暈と吐き気が襲い掛かる。

 リヴが口にしたのは「サイガイダケ」、有名な毒キノコであり食えば当然死ぬ。


「んぅぅぅ!! うぅぅぅぅぅ……っと!! 死ぬ、死ぬかと思った!!」


 だがリヴは数十秒苦しんだけでいつもの調子へと戻った。


「ぷふぅ……やべぇ、やっぱ良く分かんねぇものは食うもんじゃねぇな」


 死ぬはずだったリヴはヨロヨロと立ち上がり、フラフラとした足取りで再び歩き出す。

 そうして暫く歩き続け、森を抜けた。


 ――そして一週間後。


「……はぁ……まともなメシが食いてぇ」


 一人で狩りをしたことが無いリヴは肉や魚を獲ることもできず、生えていた雑草や川の水で腹を誤魔化してきたが、まともな食事を摂らなかった彼にとうとう限界が訪れようとしていた。


「うぁ……」


 そして遂に、力尽きるようにその場に倒れ伏す。


 あー、やべ。どうすんだこれ。町まで歩けねぇし、歩けたとしても魔物の俺が一人で行ったらヒデェことされる。……ていうかそもそも、もう歩く力なんて残ってねぇ。


「あー、くそ。何だよこれ」


 リヴはポツリと呟き、目を閉じる。そして意識が消失しようとしたその時、


「おーい、大丈夫?」

「……?」


 リヴの耳に、女性の声が届いた。

 その声に、リヴは起き上がる気力は無かったが、辛うじて首を動かす。そんな彼を見て、その女性は近付いた。


「お、死にそうだけど生きてるじゃん。私の名前はレヴィ。君、名前は?」

「あー……リ、リヴ」

「ははは、リヴね。そっかそっか」


 が、そんなリヴを見て愉快そうに笑うレヴィと名乗った女性は彼の目を真っすぐにじっと見る。対するリヴは、視線を動かすこと無く虚ろな目で彼女の視線を一心に見詰めた。


 そうしてやがて、彼女は口を開いた。


「よし! それじゃあちょっと待ってね」


 レヴィはリヴから距離を取ると、パンと大きな音を立てて手の平を合わせる。

 

 ――ズゴゴ


 すると地面にワープホールのような大穴が空き、そこから一匹の巨大な……とにかく巨大な亀が現れた。

 が、その大きさよりももっと注目すべきことがある。それはその亀の甲羅の上に一軒の家が建っているのである。


「おーおー、こうして呼び出すのは久しぶりじゃのうレヴィ」

「やっほコル爺」


 レヴィが呼び出したのは魔物の中でも希少な幻獣種、コルトタートルだ。


「ほほう、そこにいる坊や……中々面白そうじゃのう」

「おぉ流石コル爺、そうなんだよ」

「ふぉっふぉっふぉ。伊達に1000年以上生きとらんよ」

「あははは!じゃあ家お邪魔するよ~。まぁ私の家だからお邪魔するって言い方もおかしいけど。さ、行くよ少年」

「……」

「よっと」


 レヴィは完全に脱力しているリヴを担ぐと、数十メートル上空へと飛び上がり、コル爺の甲羅の上に着地した。


「よし、入ろう!」


 そのままレヴィによって、甲羅の上に建っている家に運ばれた。

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