不思議な出会い その5
俺は教室でラノベを読んでいた。最近ラブコメを読み始めて絶賛ハマり中である。
教室に入ってきたのは光世だ。朝の挨拶を交わすと俺は光世に頼み事を聞いてもらった。
「なあ光世、桜咲の写真を俺が寝ている間に取ってきてくれないか」
「何言ってんのお前。そんなこと出来るわけねえだろ。大体家知らないし、見つかったら捕まるぞ」
「捕まるのは知らないが、場所なら分かる。これ買ってきたから」
俺が光世に差し出したのはGPSだった。
光世は俺を見下ろし、数秒間黙っていた。
「お前本気か」
「本気だ」
「はあ。今度飯奢れよ」
「ありがとう。恩に着るよ」
そして光世は桜咲の写真を取るまいと放課後、使い捨てのカメラを買っていった。
なぜこんなことをしてるかって?説明しよう。
俺は桜咲の正体を知ろうと色々と考えた。そして結論は、俺が桜咲を意識すると存在が無くなってしまうということだ。
ならどうすればいい。
それは光世に頼んだように俺が寝ている間に写真を取るしかない。
寝ている間は誰かを意識するなんてことは出来ない。だから桜咲の存在も残っているはずだ。だから桜咲が家に帰る前に俺は寝ないといけない。
俺は家に帰った後、とにかく飯を食った。飯を食った後だとすごく眠たくなるからだ。約束の時間、4時半になると、俺はベッドに潜り込み、頭を空っぽにした。
GPSの位置から、帰宅時間は大体5時だと推測される。30分前に横になり、ちょうど良い感じのタイミングになるはずだ。
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俺は夢を見ていた。それは俺が全校生徒の前でピアノを弾き、拍手喝采を浴びていた。弾いていた曲はショパンの英雄ポロネーズ。
現実では絶対に弾けない曲だ。
ピアノを弾き終わると俺は一躍人気者になった。休み時間にピアノを弾いてくれという声がいつも聞こえる。
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俺は天井を見ていた。少し右に電気が見える。俺は身体を起こし、後ろにある時計を見た。
時刻は午後7時半。寝ぼけた脳が起きた瞬間、写真の事を思い出した。俺は携帯で光世に連絡した。
撮影は成功したという。