不思議な出会い その2
「深山光世」
「はい」
「鈴木龍」
「はい」
この二人とは学校内で常に一緒にいる。光世は4歳の時からの仲。龍は3年前にこの学校に転入してきた。小中高一貫のこの学校には他校に移る気がないのなら受験という概念は存在しない。なので二人と同じ学校に通えてるのだ。
ホームルームの時間は大体この二人といる。宿題をやってない時はお互いのを移し合ったり、宿題がない場合は普通にお喋りなどをしている。
ホームルーム終了のベルが9時ちょうどに鳴った。教室の外に出ると高校生と中学生全員がそれぞれの教室に移動するため、とても混んでいる。俺は人混みの中をゴリ押しで抜けると、階段を降り、本当の一時間目の教室に入った。先生がドアの前で元気よくみんなに挨拶をしていた。俺も元気よく挨拶をすると席に着き、科学用のノートを取り出した。『高校1年の科学』の教科書を出そうとしたが、どうせプロジェクターで壁に映し出されるのでやめた。
今日は量子物理学の授業だ。先生が電子は波なのか粒子なのかをみんなに聞いて、俺達に動画を見せた。
内容は詳しくは覚えてないがすごかっただけ言っておこう。
そのまま2時間目、3時間目を過ぎると4時間目になった。4時間目は美術の時間だ。俺は美術の教室に入り、奥にある右側のテーブルに着いた。
もうすでに二人がテーブルに座っていた。そしてこの二人はよく知っている。内山日向と川浜彩花。なぜこの二人を知っているのかというと、俺はこの二人の恋愛事情にひどく巻き込まれているからだ。言い忘れていたが俺は恋愛経験こそないが、恋愛をサポートする経験は誰よりも多かった。どれだけこの二人に苦しめられたか。
〜二年前〜
「ねえ春太!あの転入生カッコよくない?!」
俺は身長が13センチも低い日向を見下ろしながらこう言った。
「ああ、そうだな」
「反応薄いなぁー」
そりゃそうだろ。自分じゃないやつがカッコいいって言われて嫌な気分にならないやつがどこにいる。
日向は転入生と喋ろうと俺の元を去っていった。背中くらいまであった黒いサラサラな髪が見える。そして今日はスカートを着ていたのでスラリと細い足が見える。だがいつも見ている大きな目と小さな顔は見えなかった。
俺は一ヶ月くらい日向のサポートをした。もはや日向と転入生の架け橋になっていた。そして悔しかった。なぜ俺はこんなことをしているのだろうかと毎日思っていた。第三者なんて一番かっこ悪い。第三者以外がみんなハッピーエンド。そう思っていた。
2ヶ月後、二人は付き合った。俺が時間を作り、場所も確保した上で、転入生は告白をした。もちろん成功し、めでたく二人は結ばれた。これには俺も嬉しい気持ちでいっぱいだった。サポートした甲斐があったと思えた。
だが数カ月後・・
「春太くん、、別れちゃった」
「そうか」
悲しんでる日向にその一言を残した。励ますなんて少女漫画のイケメンな男みたいなことはしなかった。ただそっとしといた方が良いと思ったから。
だけどそこで話は終わらない。
なんと、また好きな人ができたそうだ。
〜今〜
これの繰り返しだ。
二年間。
しかも忘れてないか?
彩花もいることに。
そう。俺は二人の恋愛をあんな風に2年間も見てきた。
俺は常にサブキャラ。
恋愛は見守るものだ。