【コント】寿司屋
場所……寿司屋
役……男性店主→ボケ 男性客→ツッコミ
客「おっ、こんなところに寿司屋が。入ってみるか」
客、寿司屋に入る。
自動ドアの開く音がする。
店主「らっしゃい。なに握ります?」
客「早い早い。まだ席についてないんだよ、こっちは」
店主「はぁ、すいやせん。自分、せっかちなもんで。どうぞ、こちらのカウンター席へ」
客、勧められたカウンター席に座る。
店主「へいお待ち、鯒の握りでございやす」
店主、客の前に鯒の握りを置く。
客「俺、まだ何も頼んでないんだけど?」
店主「お客さん、さっきなに握ります? って聞いたとき、鯒って言いやしたよね?」
客「こち……? いや、コチじゃなくてこっちね! あっちやこっちのこっち! こっちはまだ席についてないって意味で言ったの!」
店主「はぁ、どうもすいやせん。せっかちなもんで。お下げしやす」
客「はぁ……いいよ、これ食べるから。で、これ幾ら?」
店主「(間髪いれず) いえ、鯒でございやす」
客「いや、寿司ネタのイクラじゃなくて、これの値段を聞いてんの!」
店主「はぁ、どうもすいやせん。せっかちなもんで」
客「はぁ……もう値段のことはいいや。(鯒の握りを食べる) ん! これだよ、やっぱりこういう店だと味がいいね!」
店主「(間髪いれず) ですからそちらは鯒でございやす」
客「あんた、何もかもが寿司ネタに聞こえるのか⁉ 魚の鯵じゃなくて、味覚の味!」
店主「はぁ、すいやせん。「せっかちなもんで」」(客も一緒に言う)
客「言うと思ったよ! はぁ、もう、この店やめよう。お勘定」
店主「お勘定はできやせん」
客「は? あんたが店主だろ? 早く勘定しろよ」
店主「自分、店主じゃねぇんです」
客「は? 店主じゃない? じゃあ誰なんだよ?」
店主「客でございやす」
客「客ぅ? じゃあなんでそこに立ってんだよ?」
店主「実は、店主はさっき出前に出ていったばかりでして」
客「それがどうしてあんたがそこに立つことになるんだ?」
店主「自分、ここの常連なもんで、店主に『ここは任せた』と言われやして……」
客「その割にはずいぶん握りが上手かったな」
店主「へい、そりゃもう店主の握りを間近で見てやすから!」
客「へぇ。なんでも握れんの?」
店主「いえ、一つだけでございやす」
客「一つだけ……? ま、まさか……」
店主「へい、鯒の握りだけでございやす」
客「やっぱりか……! 通りで鯒ばかり言ってくると思ったよ……。それでよく店主が任せたな」
店主「いっけね、出前の時間だ! ここは任せやしたぜ!」
店主、店を飛び出す。
客「さては前の店主も偽物だったな⁉ ってか俺が店主すんのかよ! 本物の店主早く帰ってきてー!」
おわり