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百年の恋  作者: あおい
10/21

気づいてしまった

事実に気づけば、その残酷さにまた涙が溢れた。


そうよ。好きも愛してるも全部私からだけだった。誠一郎さんはただ微笑んでいただけ。恋人気取りでいた私はなんて恥ずかしいんだろう。


消えてしまいたいような恥ずかしさに足が止まる。息が上がり、泣き声がしゃくりあげる声に変わった。

苦しい。今の状態じゃとてもおめでとうだなんて言えない。


もう少しでいいから時間が欲しかった。そうしたら、無理矢理でも気持ちを落ち着かせて、お祝いするから、あと少しだけ心の整理をする時間が欲しかった。


すぐに笑うには私の恋は執念深すぎた。そして、終わりを見極めるには、恋い慕う時間が長すぎた。


まるで長い夢から覚めたような、呆然とした気持ちだった。それでも心の冷静な部分が家に戻らねばと思う。叔母の手伝いをして、畑仕事をして、いつも通りに過ごさなければいけない。


昨日までと同じようにいつも通りに過ごさなければならない。

昨日までの私は今日の私とは全然違くても、それでもいつも通りに過ごさなければならない。


誠一郎さんが私を見つめて微笑むだけで、昨日までは幸せでたまらなかった。心が浮き立って自然と微笑み返すことができたのに。


今はただ、その笑顔を思い出すことすら苦しい。

私は孤児で、あなたとは釣り合わないとあれほど口に出していながら、心の底ではあなたと結ばれることを夢見てたのだと気付かされた。


なんて浅はかだろう。

身の程知らずで、けれど幸せな夢を見ていた。

だからもう会わない。だってもうわかってしまった。


決して手に入らないこと。

望むほどに苦しいこと。

そしてあなたの近くにいたら、あなたを諦められないこと。


それに、あなたの幸せを願えない私は、あなたのそばにいるべきじゃない。


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