7話
魔法適性の確認をしながら森の中の舗装された道を歩くこと数十分、明らかに敵意を向けてくる魔物が目の前に現れた。
それは4本の牙を持ち、車並みの大きさをしたイノシシだった。
『主様、お下がり下さい。ここは私が』
「う、うん。頼んだ!」」
未だに武器を持っていないことに今更ながら気付き、村で武器を調達しておくんだったと思いつつ後ろに下がる。
こいつはルナの敵う相手なのだろうか。もしダメだったら?そんな俺の不安をよそに、ルナは一歩前へ出る。
そして前足を振り上げたかと思うと、そのまま振り下ろし鋭い爪からいくつもの風の刃が飛びイノシシの体を引き裂いた。
……フェンリル、めちゃくちゃ強え。
ぐちゃぐちゃになった魔物から目をそらすが、視界の端でキラリと光る何かを見つけ恐る恐る視線をやる。そこには野球ボールぐらいの大きさの丸い綺麗なガラス石?が落ちていた。
「ルナ、もしかしてこれが魔石?」
『そうです。魔物の体内で生成される魔力を帯びた石ですね。人はこれに価値をつけると聞きます、拾っていきましょう』
魔物の血で血まみれの魔石をクリーンで綺麗にして、アイテムボックスにしまった。
ラノベとかではよく魔物の肉や毛皮に価値がついたりするが、このイノシシはズタズタに引き裂かれていたとても素材として優秀とは思えない。それにこんなぐちゃぐちゃなものアイテムボックスに入れたくないし。
「さっきのルナの攻撃、俺にもできるかな?」
武器がない以上魔法で対抗するしかない。
さっきルナがやったような攻撃が魔法で再現できるならばここらの魔物にも充分対応できるだろう。
『主様の魔力保有量だと厳しいと思われます』
「マジで。俺ってそんなに魔力少ないの?」
『少ないというわけではないのですが、私が先ほど使ったのと同等の威力の魔法は上級になるので訓練を積まないと難しいかと』
「そっかー、女神様に見初められたからって魔力的な加護がついてたりとかはしないもんなんだな」
世の中そう上手くはいかないらしい。
そういえば、女神様が何か話したいことがあれば教会を訪れろって言ってたな。機会があれば相談してみるか。
それでも諦めきれず魔法の練習をしながら進んでいると、ふと目眩を起こした。
『主様、魔力切れを起こしています。結界を張るので少しここで休憩しましょう』
「ああ、助かるよ、ありがとう」
本には載っていなかった自己流の魔法を数十発撃ったところで魔力切れを起こしたようだ。アイテムボックスにある青ポーションを使おうとも思ったが、それはいざという時に取って置くことにした。
「ルナって好きな食べ物はある?」
お取り寄せスキルを開きながら尋ねる。
村でのことといい今といい、ルナにはお世話になりっぱなしなのでなにか異世界の食べ物をご馳走しようと思ったのだ。
『基本的に何でも食べますが、強いて言えば肉ですかね』
予想通りの返事だ。フェンリルとはいえ見た目は犬?狼?だからな。
ルナの体格を考慮しつつ唐揚げの惣菜を3パック購入する。目の前にダンボールが現れ、出来立てのほかほか唐揚げを取り出した。それをルナの目の前に置くと、ルナは遠慮がちにこちらを見た。
『よろしいのですか?』
「お世話になってるからな。たくさん食べてくれ」
『そういうことでしたら…遠慮なく戴きますね』
そう言って一つ食べると、ルナはカッと目を見開いてもぐもぐ咀嚼する。
『こ、これは…!外はサクッと中はジューシィでなんとも美味!なんという食べ物ですか!?』
「唐揚げっていう俺のいた世界で人気の肉料理だ」
『唐揚げ…!こんな美味な料理がこの世に存在したなんて…!感無量です!』
ぶんぶん尻尾を振って喜んで唐揚げを食べるルナの姿を見て、少しは恩返しできたかなと思った。




