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6話

地下に引きこもってから3日が過ぎた。

時計もなく日差しも差し込まない場所でどうやって日付が分かるかというと、ルナの体内時計は正確らしく教えてくれた。

村長が持たせてくれた水と食料は底を尽いたものの、異世界物お取り寄せスキルがあるからまだ餓死する心配はない。

俺は地下室の出入り口が開くのを今か今かと待っていた。


「なぁルナ、魔物って本当に襲撃してきたのかな」


『はい、まだ外から魔物の気配が漂っています。村人も籠城して戦っているのでしょう』


「そっか…」


不安げな俺のそばに寄って来て体を押し付けてくるルナ。ふわふわな毛並みのルナの体をもふもふしていると、なんだか不安が少し和らいだ気がした。







それから魔法の練習をしながらお取り寄せスキルで食い繋ぎ2日が経ち、魔物の気配が無くなったとルナが教えてくれた。

村長が来てくれるのを待ってもよかったが、俺は自分の足で地下室から出て行くことにした。


ギギ、と音を立てて木の扉が開く。

その瞬間、むわっ、となにか鉄のような臭いが漂ってきた。血の臭いだ。大丈夫、これは魔物の血の臭いだ。村人が必死に戦った成果だ。そう言い聞かせ地下から這い出る。


村長の家は半壊していた。

壁や家具は壊され、水や食料は荒らされていた。

それでも村長の死体が見当たらなくてほっとする。きっとみんなまだどこかに身を潜めているんだ。


しかし、そんな俺の心情など全く意に介さず現実は非情に目の前に広がっていた。


壊れた壁の隙間から見える景色。

それは初めてこの村を訪れた時に見たのどかな村とは全く異なっていた。


まさか、そんなまさか。

そんな思いを抱きつつドアから外へ飛び出す。

それは地獄絵図と言っていいほどの惨状だった。


家々は崩壊し、辺りは血の海。

そして、死体。手足が変な方向へ曲がっていたり、頭が陥没していたりといった惨たらしい人間の死体。


一瞬頭がフリーズする。

その一拍後、腹の中のものが上がってきて俺はその場にうずくまって吐いた。


スプラッタ映画なんて見ないしグロいものには耐性が無い。ましてやそれが現実のものならば尚更だ。

心配そうに寄り添ってくれるルナにも構えず、俺はその場にしばらくうずくまっていた。


しばらくして水魔法で口をすすぎ、死体は見ないように辺りを見回してみる。

結界は機能しなかったのだろうか。いや、ルナの言う通り数で押し切られてどうにもならなかったのだろう。


あちらこちらが血まみれで、たった数日でこんな廃墟になってしまうものか、と顔をしかめた。

俺は生き残った人がいないか探すことにした。

ルナに聞けば多分人の気配だとかは分かってしまうだろう。だが俺は聞かなかった。きっと現実を突きつけられるよりも、わずかな希望にすがりたかったんだ。





魔物の気配はないとのことだったので、大声をあげながら生き残りを探す。どっぷりと日が暮れた頃、俺はようやく諦めて村長の家に戻った。


人っ子一人いなかった。誰もいなかった。あるのは人間と魔物の死体だけ。それもぐちゃぐちゃになった。何度か吐いた。慣れることはできなかった。


今のところ安全な地下室に戻り、ルナを抱き締めて眠る。


「…おはよう、ルナ」


『おはようございます、主様』


おはよう、と言ってもろくに眠れやしなかった。

血肉が、死体が、夢の中にまで出てきて俺の精神を蝕んだ。


『血の臭いで周辺の魔物が近寄ってきます、長居は危険です。早々に立ち去りましょう』


「…分かった」


気は進まなかったが、村長の家を漁って地図とお金を拝借することにした。これから俺が生きていくために必要なものだ。お金があれば取り寄せスキルで飢える心配はない。


そうして地図と金貨を12枚手にした俺たちは村人たちの魂に手を合わせ冥福を祈りつつ、リンシン村を後にしたのだった。

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