5話
本によると、ここはイツツバ大陸のクロウバ王国という国らしい。
イツツバ大陸には大きく分けて5つの国があり、人族が治めるクロウバ王国、魔族が治める国、獣人が治める国、エルフが治める国、それと様々な種族が集まってできた自由国家がある。
5つの国は度々領土や物資を巡った戦争を繰り返しており、クロウバ王国では戦争に駆り出す騎士を熱を入れて育てている。
騎士になれば国を支える英雄として崇められ、国家武力を掲げて国民に対しある程度好き放題できるらしい。
本棚にあったお孫さんの日記によると、都会の暮らしと騎士に憧れ18歳で成人した後王都へ旅立ったと書いてある。
戦争に使われるだけの騎士に憧れるなんて、と思いもしたが、英雄として崇められるのならそれに憧れる人も少なからずいるのだろう。
こんな陰鬱とした森の中で過ごしていたのなら尚更だ。
剣と魔法の世界と聞いて少なからずわくわくしていたが、度々戦争を繰り返していると知って気分が重くなった。力がなければ戦争に巻き込まれ死に、力があれば戦争に利用されるのが目に見えていた。
ただでさえ魔王が復活?してこれから何が起こるのかも分からないのに、前途多難というかなんというか。
1日と数時間を使って本棚の本をあらかた読み終えて、ふと隅っこの方に埃をかぶって追いやられている本があることに気付く。『5歳から始める初級魔法』という本だ。
おもむろに開いて読み始める。
魔法の属性は全部で10種類あり、この本にはそれぞれの属性の一般的な初級魔法が載っていた。
魔法を発動するには魔力を巡らせ頭の中で魔法のイメージを強く念じ、詠唱をするのが大事らしい。
そこまで読んでふと、ルナを治した時のヒールとクリーンは詠唱も魔力を巡らせる?ことも意識してなかったと思い出す。もしかして頭の中のイメージだけで魔法は発動できるのではないだろうか。
本に載っていた初級中の初級の魔法を試してみようと手のひらを上に向けて突き出す。まずは本に書いてある詠唱をしてみよう。
「水の女神よ力を貸し、我の目の前に清い水の球を現せたまえ。ウォーターボール」
すると突き出した手の上にバレーボールほどの大きさの水の球が現れる。消えろ、と念じるとあっという間に水は跡形もなく消えた。
次は詠唱をせずに。頭の中で手の上に水の球が現れるのをイメージすると、また水の球が現れた。
…この水は飲めるのだろうか?
そう思い口をつけてみる。
…うーん。不味くはないけど美味くもない。
今度は冷たくて美味しい湧き水をイメージして球を出して飲んでみる。
おお!冷たくて美味いじゃないか!味や温度まで魔法はある程度自由にコントロールできるらしい。
ルナにも魔法で出した水をあげると。美味しそうにがぶがぶ飲んでいた。




