4話
村長は立ち上がり、俺にあてがってくれた部屋へ入ると、床を調べ始めた。するとガタン、と音を立てて床板の一部が外れた。中には下へ降りる階段がある。
「孫の趣味でここには地下室があってね。君はここへ身を隠すといい。なぁに、心配はいらない。危なくなったら逃げるし、絶対に死なないと約束しよう」
胸を叩いて自信満々に約束してくれる村長。
ルナが何か言いたげにしているが、押し黙っているようだった。
その後村長は3日分の水と食料、毛布を地下に運び込んでくれた。
『主様、時間が無いのでこれから結界を張ります。念の為気配遮断と防音の効果を付与しますので主様が見つかることはありません』
「うん…頼んだ」
そう言ってルナは小さく遠吠えをすると、キィンッとなにか地下室が神聖な気に満ちた音が聞こえた気がした。
地下室を見回してみる。
足元には運び込まれた物資。部屋の奥側には木の机と椅子、大きな本棚にぎっしり詰め込まれた本。机の上には小さなランプと、羊皮紙とインクと羽根ペン。地下室にあるのはそれだけだった。
ほとんど接点がないとはいえ村人が危険な目に遭うかもしれないのに一人だけ安全な場所にいていいのだろうか?と思うが、魔法適性があるとはいえ武器も持っていない子供が一人いたところで何ができると言うのだろうか。
大丈夫だ、村長はあれだけ自信満々に大丈夫だと言ったんだ。きっと村の結界だって機能するし、村人だって強いんだ。
自分は安心してここで待っていればいい。
そう自分に言い聞かせ、まずはランプの灯りを灯そうと机に近付く。
恐る恐るランプに触れると、触れただけでランプがパッと明るくなった。
『魔石を使った魔道具ですね』
「魔石?」
『主に魔物の体内で生成される、魔力を帯びた石のことです。それをエネルギーとして用いた道具を魔道具と言います』
ルナの説明になるほど、と頷く。
ランプの灯りは心もとない明るさだったが、それでも他に光がない状態ではありがたかった。
次に本棚へ近寄ってみる。
ぎっしり詰め込まれている本は『クロウバ王国の騎士の心得』『騎士になるには』『剣術マスター・中級』といった本が並んでいた。
それの一冊をおもむろに手に取り、椅子に腰掛ける。
ルナもしばらく部屋の中を見渡していたが、やがて俺の足元へやって来て座った。
村長の家もそうだったがここには時計がない。
窓もなく灯りはランプの光のみ。いつまでここで引きこもればいいのかと不安になったが、きっと襲撃が終われば村長が来てくれる。
それに魔物の気配が去ればルナが察知してくれるだろう。
そう思い、不安な気持ちを拭いきれないまま本を開いた。




