10話
果実水はレモンの味がしてさっぱりして美味しかった。
気を取り直してメニューを見ると、なんだかよくわからない単語で溢れている。
クマーンのステーキ、ウシーンのステーキ、シカーンのステーキ…ってステーキばっかじゃないか!しかし俺も男だ、肉は嫌いじゃない。
なんとなく前世の牛に似た名前のウシーンのステーキを頼んでお会計をし、待つこと10分ほど。でっかい木の皿にこれまたでっかく盛られたでっかい肉の塊がテーブルに運ばれてきた。
で、でかい。見た目はただのステーキなのになんてでかさだ。それに硬そうな黒パンが一つついてきただけでサラダや他の付け合わせなんかもない。
他のテーブルを控えめに見やりこれがこの世界、いやこの店の普通なのだと理解して食べ始める。
硬い。パンが硬い。ちぎるのも一苦労で、顎で噛み切ろうものなら顎が壊れそうだ。仕方なく小さく小さくちぎって食べ進める。ぼそぼそして味は…うん、素朴な感じ。
お次はメインのステーキだ。
ナイフを入れると…否、ナイフが入らない。なんとか苦労して切り分けて口へ運ぶと、ダイレクトに肉の旨味が口の中に広がった。これは美味い。久々にがっつりとした肉を食べた気がする。
美味さだけで言ったら創意工夫された日本の食事の方が美味いが、これはこれで肉を食ってる!って感じがして好きだ。
しかし味付けがいやにシンプルだ。もっとこう、ステーキソースとかあったらもっと美味いのに。周りの客を見ると皆美味そうに肉を頬張っているので、ここらの客には本当に人気な店なんだろう。
米が欲しいがここは異世界。米が流通してるとは思えない。無い物ねだりはほどほどにして、やたらでっかい肉を半分ほど食べたところでお腹いっぱいになり、残りの肉をこっそりアイテムボックスへしまった。
一度宿へ戻ってルナに出てきてもらう。
さっきしまった肉をあげると、喜んで食べてくれた。
基本的にルナは何でも食べられるがこういった肉!って感じの肉が一番好きらしい。
リグルさんに教会の場所を聞き、午後からは女神様に会いに行くことにした。
街の東側にある大きな教会。ここでは水の女神が祀られている。ふと他の神や女神だったらどうしようとも考えたが、そこはなんとかなるだろうの精神だった。
豪華な教会へ入り女神像に祈りを捧げると、俺の意識はホワイトアウトした。
「…女神様!」
俺は瞬時に何が起きたか理解した。
女神様にまた会えたのだ。
目の前には相変わらず美しい姿の女神アクアが微笑んで佇んでいた。
「数日ぶりですね。その後こちらの世界はどうですか?」
「はい、大変なこともありましたが…アクア様に戴いた加護のおかげでなんとかやっていけてます。そこで一つお願いがあるのですがよろしいでしょうか?」
「なんなりと」
「生きていくために生産ギルドに入りたいので生産系スキルがほしいのです」
「分かりました。革細工、木工、裁縫、錬金、鍛治スキルを授けましょう。最初はレベルが1ですが鍛えていくうちにレベルが上がりますよ。そうだ、成長促進スキルも授けましょう」
至れり尽くせりだ!
「ありがとうございます!」
「いえいえ。貴方がこの世界で不自由なく生きていくために協力は惜しまないつもりです。何かあればいつでも教会へ来て祈りを捧げて下さいな」
しかしこれ以上のわがままを言ってしまうのは忍びない。それに後が怖い。必死に徳を積んで女神様に恩返ししなくては。




