9話
無事に?王都に入れた俺たちはまず宿を探した。
流石王都というだけあって宿の種類は様々で、ボロボロの簡素な造りの宿からいかにも金持ちが泊まりそうな高級そうな佇まいの宿まで色々あった。
どうしよう。手持ちもそんなにあるわけじゃないし、かといって宿代をケチって防犯が機能してなくて襲われでもしたらシャレにならない。
ここはスタンダードに、普通の冒険者が泊まってそうな普通の宿を探そう。探してみると案外見つかるもので、緊張しつつ宿の扉を開いた。
「やぁー、いらっしゃい、駆ける風馬亭へようこそ」
出迎えてくれたのはカウンターで肘をついてぼんやりしていた淡い赤髪の優男だった。上品ですらりとしているのに体つきはほどよく筋肉がついているイケメンだ。
「君1人かい?ご両親は?」
こんな子供にもあくまで優しく丁寧に対応してくれる。これは当たりだと心の中で喜んだ。
「両親はいません。1人で旅をしています。宿泊お願いできますか?」
そう言うと、優男…リグルさんと言うらしい。リグルさんはしばし何か考え込んでいるようだったが、金を払うなら客だと思い直したようだ。
「朝夜ご飯つきで5000ガルディンだよ。何泊するんだい?」
うーん、ちょっと高いと思ってしまう。
インベントリのお金は残り12万2800ガルディンだ。
あまり無駄遣いはしたくないが、野宿生活はもうこりごりでベッドとお風呂に憧れる。
「とりあえず10泊お願いします」
そう言ってポケットに手を突っ込み、インベントリから5万ガルディン出ろと念じて手のひらにさっき通行料として渡した小金貨と呼ばれる貨幣を5枚取り出す。
それをリグルさんに渡すと少し驚いた表情をしたものの、すぐに気を取り直して鍵を持って部屋まで案内してくれた。俺たちが泊まる部屋は二階の一番手前の部屋だった。
去り際にリグルさんが「こんなに可愛い子が1人旅なんて世も末だな」と苦い顔をして呟いていた。
中に入ると、ベッドとクローゼット、テーブルとチェアー、簡易な本棚やランプ、ぼっとん式のトイレなどがあって手入れは行き届いているように見える。
しかし肝心なものが見当たらない。
そう、お風呂だ。
クリーンで綺麗にしているとはいえお風呂を楽しみに宿に泊まったのに。もしやお風呂って贅沢品だったりする?
「ルナ、大変だ。お風呂がない」
『それは残念です』
がっくりした気持ちをルナに届けつつ、気を取り直して一階へ向かった。
「リグルさん、今お時間大丈夫ですか?」
「ん?ああ、大丈夫だよ。どうしたのかな?」
「田舎から出てきたばかりでお金のことを知らなくて、教えてほしいんです」
リグルさんは嫌な顔一つせずに教えてくれた。
小銅貨100
大銅貨500
小銀貨1000
大銀貨5000
小金貨10,000
大金貨100,000
白金貨1,000,000
とのことだった。
今俺は小金貨を7枚と小銀貨を2枚と大銅貨を1枚と小銅貨を3枚持ってることになる。
リグルさんにお礼を言い、それとオススメのご飯屋さんを聞いて昼食を取るために店を出た。
そこは風馬亭の目の前に店を構える酒場だった。
酒場とはいえ朝から営業してるし、治安も悪くないから絡まれる心配も少ないだろうとのこと。
早速店に入り席に着くと、元気な男の子がメニューを持ってきてくれた。
「いらしゃいませっす!この果実水はサービスっす、ごゆっくり!」
キラキラと溢れんばかりの笑顔を向けられ思わず浄化されそうになるのを踏ん張って抑える。若者の笑顔に心をやられるなんて…おっさんか?いや、元おっさんだった気がする。




