8話
無事に森を出た俺たちは街道沿いを北に進んでいた。地図によるとこの先に王都があるらしい。地下室で読んだ本によると王都には冒険者ギルド、生産ギルド、商人ギルドがあり、いずれかに属していればお金が稼げたり暮らしやすくなるそうだ。
生産系スキルは持っていないため生産ギルドに入るつもりはなく、商人ギルドには年齢制限で入れないが、冒険者ギルドには5歳から入れるらしいのでとりあえず冒険者ギルドに所属するつもりだ。
お金を稼ぐにはやっぱり鍛冶や錬金術といった生産系が王道だろうけどスキルを持っていなければろくな物が作れない。スキルというのは普通は数年単位で修行して身につくものらしい。
今度女神様に会った時に生産系スキルくださいってお願いしてみようか。とは言っても8歳そこらの子供が鍛冶や木工スキルなんて持っていたら不自然極まりないから錬金か革細工、裁縫あたりが無難だろう。
そんなことを考えながら歩くこと数時間。子供の足の割には進むスピードは速いが、きっと女神様がおまけでつけてくれた【身体強化・微】の恩恵だろう。だからといって体力までついてくるとは限らず、数時間毎に休憩しながら歩いているとやがて空は暗くなり夜になった。
火の魔法で焚き火を作り、ルナに結界を張ってもらう。お取り寄せスキルで今日は牛丼を注文し、二人で甘辛い肉の味に舌鼓をうち、毛布とルナにくるまって星空の下眠った。
ルナに背中に乗せてもらい、走ること数日。
俺たちはようやく王都の街を囲む外壁が見える場所まで来ていた。
「王都に着いたらまずはお風呂に入りたいよな。クリーンで綺麗にしてるとはいえ、元日本人としてはお風呂は欠かせないよ」
『お風呂とは何ですか?』
「暖かいお湯がいっぱい入った箱のことかな。石鹸とかで体を綺麗にしてお湯に浸かると気持ちいいんだ」
『それは楽しみですね』
そんなことを考えているとふとある疑問が頭に浮かんだ。ルナは神の眷属と言われるフェンリルだ。そんな存在が突然街中に現れたらパニックにならないだろうか。
「ルナ。ルナって姿を消したりできないのか?突然街に入ったりしたら混乱が起きる気がするんだけど…」
『主様が望むのであれば…主様の中に入ることはできます』
「俺の中に!?どういうこと?」
『理屈で説明するのは難しいのですが…入ってみましょうか?』
そう言うと、ルナは俺に近付き鼻先で俺をつつく。
すると影になったようにもやが走り、ルナは俺へ向かって吸い込まれるように消えた。
「うわっ、ほんとに俺の中に入った!」
痛いとか痒いとかそういうのはない。
なんだか不思議な気分だ。
『私も始めて行いましたが案外居心地が良いですね』
「あっ、中にいても念話はできるんだ。ちょっと安心した」
危ない目に遭ったら頼むよ、とだけお願いしていよいよ俺たちは王都へと向かって歩き出した。
門の前にはたくさんの人や馬車が並んでおり、一時間ほど待たされたから自分の番になった。
「お前、1人か?身分証は?」
厳つい顔をした鎧を着た兵士に問い詰められて思わず後ずさる。
「身分証…持ってないです」
「…身分証が無い?」
いかにも、こいつ面倒事だなという顔をされた。
「なら通行料だな。小金貨1枚だ。持ってるか?」
「小金貨っていくら?」
「…そんなことも知らないのか?1万ガルディンだよ」
それなら、とポケットの中に手を突っ込んでアイテムボックスから小金貨を1枚取り出す。それを兵士に差し出すと、驚いた顔をされた。
「金の価値も知らないのに持ってるのか…いや、まぁいい。次はこの水晶玉に手を触れるんだ」
ラノベでよくあるやつだ、とピンときた。
そっと水晶玉に手を触れると、淡い水色に光った。
よくある話だとこれは犯罪歴を調べるもので光ると犯罪歴があるということなので大いに焦ったが、兵士は顔色一つ変えなかった。
「これは犯罪歴を調べるものでな。犯罪者が触れると赤く光るんだよ」
そういうことは早めに言って欲しい、と1人ため息を吐いた。




