序章
暖かく心地よい光に包まれ目が覚める。
自分は真っ白な空間でふかふかなベッドの上に横たわっていた。
「目が覚めましたか?」
鈴の鳴るような美しい声に反応して横を向くと、これまた全世界の美貌を集めたような美しい女性が立っていた。
思わず飛び起き、ベッドの上で正座をする。
そんな自分の姿を見て女性はくすりと笑った。
「初めまして、土屋斎様。私は水を司る女神…分かりやすいようにアクアとお呼び下さいな」
思わずこくりと頷きそうになるが、ふと疑問に思う。
女神とは?そしてこの真っ白な空間は?
自分はこの女神と名乗る人物に誘拐されたのだろうか?
いったい何故、何のために?
眠る前の出来事を頭をフル回転させて思い返す。
…そうだ、自分は仕事からの帰り道、小さな子供が車に轢かれかけているのを助けてトラックに轢かれたんだ。
だとしたらここは病院…ということになるが…。
そんな自分の思考を読んだかのように女神はこくりと頷いた。
「そう、貴方は幼い子供を助けて代わりに死んでしまったのです」
…死んだ?そうか、ここは病院でもなんでもない、死後の世界なんだ。だとしたらベッド以外何もない、どこまでも続く真っ白な空間にも説明がつく。
「貴方は生前、今時珍しく善行を積み重ねた清い魂を持った存在。そんな貴方を私たちは大変気に入りました。本来ならば死ぬと輪廻の輪に加わるところを、地球の神に無理を言って貴方の世界で言うところの異世界…このエレクティアに転生させてもらうことになったのです」
「エクレア?」
「エレクティアですよ」
転生とか、突然そんなことを言われても混乱は増すばかり。
しかし、アクアの次の一言でそんなことはどうでもよくなってしまった。
「転生先のエレクティアは貴方が大好きな剣と魔法の世界なのですよ」
「剣と魔法!」
ゲームやラノベでよく見ていた夢にまで見た剣と魔法の世界!そんな世界に転生できるのなら理不尽に異世界に連れてこられたこともどうでもよくなってしまった。
「納得頂けたようですね。エレクティアでは貴方は自由に生きて頂いて結構です。やらなくてはいけないことや、使命などはありません」
「えっ、本当に?」
ラノベでは世界を救えだとか魔王を倒せだとかがテンプレだ。それが何もしなくていい、ときた。
自分の問いにアクアは笑顔で頷く。
「はい、私たちの都合で来て頂くのですから、あれやこれやを押し付けるつもりはございません」
だとしたら自分としても願っても無いことだ。
心の中で密かにガッツポーズをする。




