達人の描写のヒント?『礼を尽くして隙は見せず』
ちょっとした所作や動作で、
(むむ、こやつできる。これまでどれ程の修羅場をくぐってきたのやら……)
なんて思わせる、こういうのカッコいい。
そして相手の実力を戦う前に見抜く達人、というのもまた良し。
そういうのが好きな人に、チャンバリストが役に立つか立たないか、解らないような例をひとつご紹介。
いや、まぁ、たまたま気になるようなのを目にしたので。
現代では役に立たないものだろうけれど、その形になった意味がある、というものでして。
武道で正座して礼をする、というのは柔道でも剣道でも空手でもあるもの。
この正座と礼がちゃんとできると達人です。
いや、マジで。
あれ? 疑われてる?
では、解説を。
正座するときは、足の甲を重ねてはいけない。足の指も重ねない。
中には親指だけ重ねる、というところもあります。
片足の甲をもう片足の土踏まずに乗せて重ねてはいけません。
理由としては、やってもらうと解りやすいのですけれど。
背後から忍び寄って来た敵が足の裏を踏みつけると動けなくなるからです。両足を重ねて正座していると、足の裏を踏まれるだけで両足とも抜けなくなります。簡単に拘束されます。
足の指を重ねない正座であれば、踏まれても右足か左足、どちらか片方は前に抜けます。
敵が踏みつけたときに一点を押さえられたら動けなくなる、それを回避するために、正座するときは足を重ねないようにする訳です。
次に礼
手を地面について頭を下げるのですが、このとき両手をハの字にします。
両手の親指と人指し指で、三角形をつくり、その三角に鼻を入れるようにして頭を下げます。
この手の位置はけっこう重要です。
頭を下げたときに敵が後頭部を押さえつけたとき、顔面を床に打つことになります。
顔の中で高い部分、鼻を地面にぶつける形に。
鼻骨を強く打つと涙が止まらなくなります。反撃しようにも、涙で視界が滲む状況は回避したい。
地面についた手を、危ない、と思ったときには手首を返して手を立てましょう。小指側が床に、親指側が上になるように。
両手で作った三角の中に鼻がおさまるようにします。
これで人指し指の根本に頬が当たる形に。
鼻骨への衝撃を回避することで、涙で視界が悪くなることを防ぐことができます。
そうすれば、その後、立ち上がって反撃するにも、逃げるにも視界が確保できます。
礼を尽くして隙は見せず。
正座しての礼の形があの姿と手順になったのは、こういう意味合いがいくつも入っています。手をつく順番に視線の置き所などなど。
一瞬の隙が命取り。膝の位置、手の位置が僅かに違うだけで生死を分ける。咄嗟に身を守り、かつ、反撃または逃走へと移れる位置取り。
これを理解してそのように身体を動かせると綺麗な礼に。
なにより正座からの礼がちゃんとできる、ということは。
立った状態から正座して、礼をして、再び立ち上がる間、ありとあらゆる方向から刀や槍を持った相手に襲われても、対処できる姿勢と動き方。これができる、ということです。
ね?
正座と礼がちゃんとできたら、達人でしょ?




