表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
一所懸命★魑魅魍魎♪  作者: 之園 神楽
第弐鬼 悪戦鬼闘編
45/94

第肆拾伍巻 気運

第肆拾伍巻 ()


「そろそろ『亀』さんたち、動き出しそうだよ」

 壁際にもたれかかりながら腕を組み『ヤンボシ』の夜星やほしが口を開いた。

「そう。ギリギリ間に合ったというところでしょうか」

 『すずりの精』の鈴璃すずりがその報告を聞いて、その墨をらしたようなつややかな黒髪と同じ、整った長く美しい睫毛まつげせた。

 現在、通称『生徒会室』と呼ばれるようになった一室で、複数の女の子たちが話し合っていた。

 典人のりとが食事の時に、皆の前で「まずは生徒会みたいなものを作っていこうと思うんだけど」と言ったのがきっかけで、典人のりとたちが日ごろ使う部屋をそう呼ぶようになった。

 ちなみに、この場には典人のりとの姿はない。あえて典人のりとにはせている話題だからである。

「随分と遅かったと思いますけど」

  持っていた湯呑ゆのみを机の上にコトリと置いて『河童かっぱ』の津渦波つかはが感想を述べた。

「女の子の数から考えて、この砦にいる戦力になりそうな男の数を推測していたらしい」

 『藤原千方ふじわらのちかたの鬼』の『隠形鬼おんぎょうき』の千隠ちがくれがその疑問に答える。

「まあ、確かにかこっていると考えるなら、最低でも女の子の数の3倍は見るでしょうか?」

 『七人みさき』の次女設定のみさらが人差し指を頬に当て推測する。

「慎重にさせちゃったかな? 少しサービスし過ぎたかもね。生足出すくらいでも十分だったんじゃないのかな?」

 『馬の足』の魔埜亜まのあがコロコロと笑いながら言い放った。

「まあ、どの程度で釣れるかがわからなかったし、」

 爪の手入れをしながら『コサメ小女郎こさめこじょろう』の小雨こさめが言う。

「この数日間、わざわざ水着で挑発した甲斐がありましたわね。まあ、典人のりと様が真っ先に釣れましたのはご愛敬あいきょうというところですわね」

鈴姫すずひめ、あんた大していつもと変わらない恰好でしょうが」

 『鈴彦姫すずひこひめ』の鈴姫すずひめの言葉に『橋姫はしひめ』の姫刃ひめはが突っ込みを入れている。

「やっぱりウチの悩殺貝殻ビキニが効いたのお」

「「はいはい」」

 座りながら、腰と頭に手を当ててポーズを取りつつ『衣蛸ころもだこ』のこころが言うのに対し、小雨と姫刃が両手を広げて上げ肩をすくめた。

「でも、『亀』達が慎重になってくれたおかげで助かりましたね。珠奇たまきさんたちの検証結果次第では典人様のりとさまを巻き込むことになってしまったかもしれませんから」

 鈴璃すずりが安堵の息をらしながら言った言葉に、室内にいた皆がうなづく。

「それじゃあ、いよいよ大掃除を始めるといたしましょうか」

「「ええ」」

 『箒神ほうきがみ』の奉祈ほうきの言葉に皆が返事を返して動き出した。

 どうやら砦の女の子たちの間では『亀』と呼ばれているモノに動きがあるようだ。



 広い砦の一廓には芝生の整えられた、寝転がったり、走り回ったりするのに丁度良さそうな場所があった。

 もちろん、当初は伸びるに任せてそれなりに鬱蒼うっそうとしていたが、それを整えたのは砦の女の子たちである。

 今日みたいに良く晴れた日なら、草の上に敷物でも敷き、そこにお弁当でも広げれば、ちょっとしたピクニック気分を味わえそうである。

 そこに三人の美しい少女が座っている光景は少し離れた所から見ると実に一枚の絵画を見ているような気持ちにさせられる。

現に少し離れた所では『画霊がれい』の麗華れいかがここに跳ばされてから作ったのであろうキャンバスに向かって筆を走らせていた。

 それもまた遠目で見れば一つの絵になる光景となっている。

 そんな穏やかでゆったりとした時間が流れていた。

「い~い~天気ですね~」

「そうですねえ。こういう日は、お外で日向ぼっこして光合成するのが良いですねえ」

「なるほどお、それは気持ち良さそおですう」

 順番に、『琴古主ことふるぬし』の美琴みこと、『木霊こだま』の麗紀れいき、『七人みさき』の五女設定のみさりである。

 見事におっとりした口調の3人娘が集まっている。

 「女三人寄ればかしましい」と言ったりもするが、この場合なんと評すべきだろうか。

 数人の中に一人だけゆっくり話す人間がいれば、場合によってはテンポが崩されるかもしれないが、全員がスローテンポで話す空間にあってはそれが自然の流れのように思える。

 あくまでその空間限定の話だ。

「時の流れがあそこだけゆがんで見える」

 『七人みさき』の六女設定のみさのが目に手をおおうようにかざして、草の上にのんびりと座っている三人を少し離れた所から見やっていた。

「長い時を存在し続けているあやかしのわたしたちですけど、それでもさらにあそこだけ、時間の流れが違う感じがしますね」

 みさのの言葉に『油徳利あぶらとっくり』の由利ゆりも同意する。

「あそこはあれで空間が安定していますから、そのままにしておきましょう」

 『藤原千方ふじわらのちかたの鬼』の『金鬼きんき』である千金ちがねがもう片方でのんびりと過ごしている典人のりとたちのほうを見やりながらそう言った。

 しばらくして、何処からともなく取り出した琴を芝生の敷物の上に置き、美琴みことが琴の弦を弾き、音を合わせるようにピンという音を何度か響かせた。

 やがて音の確認が終わると、美琴みことはゆったりとした曲ををかなで始める。

「平和だなあ」

 そんな琴のを聞き、穏やかな日差しに和みつつ、典人のりともゆったりとした一時を過ごしていた。

「この辺にももう少し花を植えるべきかのう。う~む、やはり食べられるものを優先させるべきか」

 典人のりとの近くでは辺りを見回しながら『山姥やまんば』の麻弥刃まやはが腕を組みつつ何やら考え込んでいる。

 見た目の年齢に不相応な真剣そうな面持ちであるが、それがなんとも愛らしく様になっていた。

 最近では畑を広げようと砦のあちこちでそういうのに詳しい子たちがせっせと作業をしている光景が見られるようになっている。

「花っていっても種とかどうするんだ? 森で探すしかないだろうけど、どんな種類の種とか分かるのか?」

 典人のりとがそんな麻弥刃まやはに問いかける。

 この世界に来てまだ良く分からないことだらけである。

 当然動植物についても知らないことだらけだ。

 元々植物を育てたりするための知識なんて典人のりとにはないし、もしかしたら麗紀れいきあたりならこの世界の植物にも知識があるのだろうかと、チラリと麗紀れいきたちの方を見やる。

「そこはご心配なく。大丈夫ですよ。麻弥刃まやはちゃんがいろいろと出してくれますからね」

 そんな疑問に答えてくれたのは花壇におけから柄杓ひしゃくで水をやっていた『瓶長かめおさ』の芽梨茶めりさであった。今日はメイド服ではなく、着物を着ている。やっぱり桶に柄杓なら和装が合うなとちょっと思っている典人のりとであった。メイド服が合わないと思っている訳ではない。風情という点から典人のりとがそう思っているだけである。

「へえ、すごいね。どうやっているの?

 何の気なしの、純粋な疑問。

「乙女の秘密なのじゃ。御館様おやかたさまよ、それ以上聞くななのじゃ。ああ、そうじゃ。妾はお花摘みに行ってくるのじゃ」

 それに対し、やや早口で麻弥刃まやはがまくしたてるように言うと、そそくさとその場を離れていく。

「お花摘みって、確かトイ……」

 その背を見送りながら典人のりとが一人ボソリとつぶやこうとした。


 バキッ! スパーン!


 その途中、鈍い音と小気味の良い音の二重奏と共に大地に沈む典人のりと

「Oh! 4バンバッターハイリマスデース」

 『キュウモウ狸』のキキの感心したような声の先、そこには手に棍棒のようなものを振りぬいた姿勢で持つ絹姫きぬひめと、せんをパンパンと手ではたいている『二口女(ふたくちおんな)』の双葉ふたばの姿があった。二人とも何処と無く頬がほんのりと朱に染まっているように見える。

 地にしている典人のりとがピクピクとヒクついているが、一応は手加減していると思いたい。

 巨大な胸を持ちその事にコンプレックスを感じており、普段引っ込み思案で大人しい雰囲気の絹姫きぬひめだが、典人のりとに対し打ち解けて来たのか大分遠慮が無くなってきている。

 なついたとも言えなくもない。

 双葉に至っては慣れた手つきでパンパンとはたいているから、恐らくは条件反射だろう。

「いってらっしゃ~い! お土産よろしくね~!」

「いてて。お花摘みでお土産って……」

 にこやかな笑顔で見送る双葉の足元から、後頭部をさすりつつ立ち上がりながら突っ込む典人のりと。意外に頑丈であるようだ。ここ最近のトレーニングの賜物たまものであろうか?

「土から産まれると書いて土産とは良く言ったものですよね」

 その光景を目にしながらも、芽梨茶めりさはニコニコとしながら、まるで井戸端会議を楽しむかのように話す。

「いや確かオレがここに呼ばれる前、伊勢神宮のお店で聞いた時は昔は伊勢神宮に参詣するのが一つの庶民の流行で、ただ露銀ろぎんが掛かる為皆が行くことが出来なかったらしい。そこで地域で『お伊勢講おいせこう』という組合みたいなのを作ってお金を集めて、選ばれた代表者が、皆から託された餞別せんべつを持って代わりに祈願し、その帰りにお札を貼るための板・宮笥みやけを買って帰ったのが、変化して「みやげ」になったって聞いたけど」

 それも一つの説とされている。その他にも、人に上げる者に対し、丁寧な言い方として「御」を付けて「御上みあげ」が変化したものとか、「良く見て差し上げる」の意味から「見上みあげ」からへんかしたものとか、幾つかの説がある。それにその土地の名産品という意味で「土産どさん」の文字が当てられたという。

「詳しいですね」

 『絹狸きぬたぬき』の絹姫きぬひめが 感心したようにのりと(のりと)を見つめている。とても先ほど、典人のりとに棍棒のようなもので張り倒したとは思えない。

「いや、ここに呼ばれて来る前に聞いたばかりだったからね。たまたま覚えていただけで、全部受け売りだよ」

 典人のりとは感心されてちょっと照れたように右手で頭の後ろを掻いている。

 そこへ『すずりの精』の鈴璃すずりが姿を現す。

 鈴璃すずりの長くつややかな黒髪の一房だけ飛び出た髪の毛が、穏やかな風に軽く揺れる。

典人のりと様、少しお話よろしいでしょうか?」

鈴璃すずりちゃん? 別に構わないけど、何?」

 典人のりとの返事に鈴璃すずりは普段でも美しいたたずまいを正して少し上目遣いに典人を見た。

典人のりと様に折り入って頼みたいことがあるのです」

 普段は柔和にゅうわな面持ちだった鈴璃すずりが真剣な表情にかわったことに気付き、典人のりとも自然と姿勢を正す。

典人のりと様には砦の子を何人か連れて、砦の結界の外の世界を見てきて頂きたいのです」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ