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賢者からの贈り物

作者: コメタニ
掲載日:2016/12/27

 人類は核廃棄物の扱いに頭を抱えていた。年々増えていく一方である、数万年に渡り放射線を放ち続けるゴミは地中深くに埋めることで問題を先送りにされてきた。だがある日、巨大な地震が起こり隆起した地層により、埋められていた核の棺が地表近くまで持ち上げられてしまったのである。人々は想像を超える自然のふるまいに畏怖の念を抱くとともに、改めて持ち上がってしまった核の処分問題に頭を悩ませてしまっていた。

 各国の代表が集まり対策会議が開かれていた。どの案も手詰まりとなり会場が静まりかえった、まさにその時、ひとりの男がゆっくりと立ち上がると朗々とした声で自身のアイディアを述べ始めた。その男は世界を代表する富豪であり、彼が提示したカードとは、所有するベンチャー企業が以前より開発を進めていた恒星間旅行船を改造し、それに忌まわしいゴミを積んで銀河の外に向かって送り出してしまおうというものであった。アイディアとしては昔から唱えられていたものではあったが、実現可能なレベルでの提案を受けて各国の代表はにわかに色めき立った。そこである国の代表が質問をした。なにも銀河の外まで送り出さなくとも近場にある巨大な核融合炉、太陽で燃やし尽くしてしまえばいいのではないか、と。だが他の国の代表として参加していた科学者がそれを否定した。巨大な太陽だが、宇宙空間の中ではあまりにも小さくそれを標的とするには余計なコストがかかりすぎると。また、公共的な場所へゴミを廃棄するような行いに倫理的な問題点を指摘する者もいたが、宇宙をさ迷っているうちに何処かの恒星の引力に捕まり、その巨大な自然の核融合炉で焼却処分されてしまうか、さもなくば木星のような大きな惑星で数万年の時を過ごし無害な物質へと姿を変えるだろうとの反論を受けてクレームを取り下げた。なにより、人類には取れる手段が残っていなかったのだから計画に賛同せざるを得なかった。


 計画は慎重に、かつ迅速に実行された。数年前に運用が開始された軌道エレベーターで地上の遥か上空に浮かぶ宇宙港まで『荷』を運び、そこで貨物用に改造された恒星間旅行船に積み替える。その作業には数年の月日を要し、ついに船の荷は満載となり出航の日を迎えた。全人類が見守る中、船は外宇宙への初めての航海へと旅立った。


 さらに数年の月日が過ぎた。いつものように船の航路をモニターしていた係員がある奇妙な電波を捕えた。その電波は明らかになんらかの決まりによって制御され、なんらかの意図を含んでいる。モニター員は興奮気味に叫んだ。

「異星人からのメッセージだ!」

 大勢の所員が息を呑んで見守る中、スピーカーからはシグナルが止まることなく流れ続けていた。信号は何回か同じ内容を繰り返すと、違うパターンに変更され、また何回か繰り返す。その工程が何度か行われたその後に突然スピーカーから流暢な英語で語る音声が流れだした。

「あなたたちの代表とお会いしたい。場所と時間は~」

 短いメッセージは何度かリピートされた後、また理解不可能な信号に変わった。


 アフリカの中央に位置する広大な草原で、人々は空を見上げ期待に胸を膨らませながら遥か遠い空からの来訪者を待っていた。短い音声ではあったが、そこから高い知性と穏やかな品性を誰もが感じていて、新たな友人との出会いに胸をときめかせていた。人々の中央には広いステージが設けられ、先進国の首脳たちがそわそわと落ち着かない様子で待機している。すると、青く晴れ渡った空の一点が小さく輝いたかと思うと銀色に光るそら豆のような物体がふわふわと降りてきて音もなくステージの中央に着陸した。その大きさはジェット旅客機くらいだろうか、群衆が息を吞んで見つめていると、そら豆のふちの一部分が開き中から搭乗者が姿を現した。彼は、ステージを取り囲み彼と彼の船を黙って見つめている大勢の人々を見回した。いや、どこに目があるのかは分からなかったが、見回したようなしぐさに思えた。そして、彼はどこにあるのか分からない口で挨拶の口上を述べ始めた。その言葉はメッセージとして届けられた時と同じように流暢な英語で、船の装置により拡声されて人々に伝えられた。

「やあ、みなさん初めまして。今日はみなさんに素敵な贈り物を届けに来ました。我々は宇宙を漂う、送り先が不明な漂流物を発見しました。そこで、持てる科学技術の総力を結集して漂流物の追跡を成功させたのです。今ここにお持ちすることが出来たのは我々にとってもこの上ない喜びです。いや、お礼には及びませんよ、困ったときにはお互い様ですから」

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― 新着の感想 ―
[一言] 星新一先生の作品みたいな味わい ありがた迷惑でも断れないみたいな トホホ感が出てますね (;つД`)
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