対話
真相はこうです
麻衣はマリの中の沙和子に向かって話し始めた
昭和35年8月、西淀川河川敷にて女児の死体が発見された。
女児の母親も娘を惨殺された後、翌日に気が狂い同じくここで入水自殺した。
母親は犯人に対しての怨みが強く残り
あの世に行けず女児と共に死体発見場所に地縛霊として留まっていた
貴女達親子も死んでいる事を理解出来ず
身体が動かない事に焦れて長年時を過ごしていた
そんな時に平成3年の夏、憔悴状態の坂口悦子と出会った
悦子は自分の病気と経済苦で自殺場所を探しにここまでやって来たのだ
自殺寸前の悦子には既に魂が抜けており乗り物の主が不在の状態であった
同じ波長なので貴女達親子は悦子に憑依しやすかった
憑依した貴女達も、された生身の悦子も一体となり
貴女達親子の記憶が悦子の記憶となり
一人の生身の身体に3人の魂が同居していたのです。
そのうち沙和子は別の依り代を見つけて移った
「それが貴女です」と麻衣はマリを指差した
母親は悦子の魂として今まで生きてきた
60年前に亡くなった貴女達親子には時間の長さが違っていたです。
「沙和子ちゃん、この男の人は貴女に何もしてないのよ」
「何も罪もない人にこんな酷い事しちゃよく無いでしょ」
麻衣は優しい口調で言った
「沙和子ちゃんも苦しかったよね、悲しかったよね。もう天国からお迎えが来てるのよ
ママと早く戻るべき場所に帰ろうね」
沙和子が憑依したマリの顔に正気が戻った
「ママ、、」マリの口から幼い女の子の声が出た
「沙和ちゃん、ママと一緒に帰ろ」悦子は優しく声をかけた
その直後に悦子とマリはいきなり倒れた。
悦子の身体から母親が、マリの身体から沙和子が出ていき
二人とも成仏したようであった。
裕也も金縛りが解けて身体の霊的ダメージもなくなっていた
裕也の祖父は戦後のどさくさにまぎれてかなりの悪党として生きてきた
結局、他人様の怨みから誰かに殺されてしまったらしいが
一家離散して家族の温かみを知らず施設で育った裕也には知る由もなかった
横を見たら優希も気を失って倒れていた
麻衣は優希に申し訳ない気持ちでいっぱいだった
ユニバ旅行も無くなったし変な事に巻き込んだし
私の正体もばれて怖い場面も見せた。
「ごめんね優希、」麻衣は優希を優しく抱き起こした
気がついた優希は泣きだした
「終わったの、麻衣、、怖かったよ、、」
「ごめんね、もう終わったからホテルに帰って休もうね」
悦子も裕也も緩慢な動きで立ち上がった
「もう全部終わったからね、ごめんね」麻衣は優しく優希を抱きしめた
もうあの親子は成仏して天国に帰った
憎悪の輪廻を断ち切る事は難しい
怨みが執着となり成仏出来ずに地縛霊となり
生者に憑依してまで怨みを晴らそうとする
この世は忍土の世界
理不尽な悲しみが多くある
宗教の教義では到底救えない
前方ではマリだけが倒れていた
裕也は心配となりマリを抱き起こそうとした