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あの頃の風景  作者: ミクマリ
8/11

魔の刻

水の底は音の無い漆黒の世界

肉体舟から解放された魂は戸惑っている

頭上から光が差し込んできた

形にはなっていないが意識は其れを天使だと認識していた

沙和子はこの世を去り天上界に帰る筈だった

光から帰っておいで、お帰りなさいと呼びかけられている

あそこには大好きなママが居る

早くお家に帰らなきゃ

意識を其処に向けて光の導きに委ねようとした時

あるべき筈の無い沙和子の脚がいきなり掴まれた

あそこに行きたいのに行けない、上に登れない

光の導くままに進めばいいのに動けない

脚を掴まれて底に落ちていく

沙和子の意識は下に落下していった


南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏

南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏



腹部にナイフが何度も突き刺され血が噴き出してきた

内臓は身体とは別意志を持ち、

壊れた臓器が気の遠くなる痛みを絶え間なく送ってくる

耳に聞こえてくるお経が段々大きくなってきた

マリは目を血の色にして裕也に顔を近づけてきた

「私はお前に殺された。レイプされてナイフで何度も刺されて川に投げ込まれた」

裕也は声にならない悲痛な形相で否定した

「違う、俺は知らない、やっていない、、、」

その一言が引き金になりマリの顔は完全に般若と化した

「お前を私と同じ目に合わせてやる。お前の穴に棒を入れてかき回し内臓を破壊してやる。

お前の身体を切り刻み、永遠の苦しみと孤独地獄に堕としてやる。早く命乞えしてみろ。

誰もお前なんか助けない。何度も同じ苦しみを味わうんだよ。永遠に!」

裕也は薄れゆく意識の中でぼんやりと考えていた

不思議に恐怖感はなかった。

今までの人生ろくな事は無かったしこの世に未練もない

予想はしていたがまともな死に方はしないと思っていた

只、この苦痛から早く解放されたいと焦れていたし

何故、マリにこんな事されるのか困惑だけが残っていた


裕也の命が尽きようとしていた時

突然、声が聞こえてきた

「沙和子ちゃん、この人は貴女を殺した相手ではありませんよ」

静かに諭すような優しい声がマリの中の沙和子に向けられた

黒雲で風景はきな臭くなっており生暖かい風が肌にべたついている静寂な午後

誰も近寄らない辺鄙な場所で

般若と化した若い女と苦悶の表情でうずくまる男の前に

麻衣と優希、悦子が立っていた

麻衣は悦子の懇願を承諾してユニバ旅行を中止して急遽、悦子と優希を連れてこの場所に来た

今日は沙和子が犯人に仕返しにくる約束の日

悦子と沙和子の霊が20年かけて仕組んだ復讐計画

その犯人を確かめたく悦子は麻衣に教えられるがままこの場所に来た

憎悪のオーラに身を包み目が血走り牙を生やした獣のようなマリに向かって言った

「貴女達親子はあの世に行けず彷徨っている地縛霊なのです」


麻衣は悦子に新幹線の中で説明した

麻衣から伝えられたその言葉に悦子は絶句した

貴女は霊体で今この女性に憑依しているのです

貴女はもうすでに死んでおり生きてはいないのです

貴女も娘さんも60年前に死んでいるのです

貴女と娘さんの執念がこの世から離れる事が出来ずに居るのです

似たような周波数を持っているこの人達に憑依しているのです

そして今日会う男は娘さんを惨殺した犯人ではありません

その男の肉体先祖が貴女の娘さんを殺したのです

私は貴女達親子を憎しみの輪廻から救い成仏させてあげます










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