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あの頃の風景  作者: ミクマリ
3/11

別人格

排気ガスが充満した工場に終了のチャイムが鳴り響く

この音は全身が汗でベタ付き鉛のように重くなった肉体労働者にとっては解放の音色である

時間を提供し賃金を得る為に苦痛な肉体労働を今日も一日やり終えた身体の充実感がある

気温も漸く凌ぎ易くなったがまだ猛暑の残り香が漂う夕刻

オレンジ色の太陽が街の景色を彩り大阪を照らす

「大庭も一緒に飲みに行かへんか?」

「先輩ダメっすよ、大庭は新婚さんで家には若くて可愛い嫁さんが待ってるし」

嫁さんじゃねぇよ、キチガイ女だよ!と裕也は心の中で毒づいた

職場の同僚が飲みに誘ってくれたが裕也には目が離せない女が家に居た

マリは危ない女だった。静岡から意識朦朧で新幹線に乗り大阪に来たらしい。

一晩中マックでハンバーガーとコーヒー一杯で過ごしてた所、朝に裕也が拾ってしまった。

金も無く腹を空かせてたから食事を驕り酒を飲ませてホテルに誘えばついてきてセックスした。

帰るとこがないと言われ裕也も逃亡者のような身だし、とりあえずホテルに泊まる生活が始まった。

今は8月、出会ったのが6月だから慌ただしい2ヶ月間

それから裕也は身元証明書が不要な土建会社に潜り込んで職を得てマリも場末のスナックでホステスの仕事を始めたが先端恐怖症により酒に入れる氷を作る為のアイスピックを持つ度に錯乱状態になり直ぐにクビになる。安いアパートを借りて逃亡者同士の同棲生活を始めたが今は裕也の安い給料だけで生活をしている。包丁にも恐怖心があり料理も出来ない、一日中横になり掃除もしない

そして何よりもマリは度々発作を起こす、一日に何度も狂ったように喚く

男に先端の鋭い刃物で刺されて水の中に沈められ殺されたと、、

一度裕也が疲れて帰ってきて玄関を開けた時にいきなり水をかけられた

「この人殺し!」と喚かれた裕也はマリの顔が腫れるまでぶん殴った事があった

ぐったりしたマリの様子に裕也を我に返り急いで応急処置した時に

マリの声が急に男みたいな声色に豹変した

「俺はお前の事は忘れてないからな」

あの時は鳥肌が立った。裕也は全身が痺れたような感覚となり数分の間、身体の動きが止まった

やがてマリも意識が戻り裕也にゴメンなさいと謝罪してきた

女の顔を腫れあがるほど殴り口が切れて血を流し涙ながらに謝罪するマリを見て

裕也はこの女は俺が守ってやらなければいけないと思った。

マリは精神疾患で俺しか頼る人間が居ないんだと分かり、愛おしくなって抱きしめた。

(統合失調症)

裕也はマリの状態を表現する適切な言葉を意識してネットで病気を調べた

統合失調症は脳をはじめとした神経系に生じる慢性の病気

症状の現れ方は陽性症状では安心感や安全保障感を著しく損なう

急性期に生じる感覚は「眠れなくなり特に音や気配に非常に敏感になり周りが不気味に変化したような気分になりリラックスできず頭のなかが騒がしくやがて大きな疲労感を残す」

誰も何も言っていないはずなのに現実に「声」として悪口や命令などが聞こえてしまう「幻聴」や

客観的にみると不合理であっても本人にとっては確信的で、

そのために行動が左右されてしまう「妄想」といった症状が代表的で根気や集中力が続かない、

意欲がわかない、喜怒哀楽がはっきりしない

横になって過ごすことが多いなどの状態として現れるものがある


先端恐怖症で男に刺されて殺されたというのはマリが頭の中で作った妄想かもしれない

しかし、あの時に出てきた男みたいな口調はなんだったんだ、、

マリの中には別人格が存在してるのか?

あのマリという女は何なんだ?同棲しているのにマリは自分の事を説明出来ずにいる

静岡での生活や生い立ちや両親の事も聞いても何も覚えてないと泣くだけ

全くとんでもない女を衝動的に拾ってしまったと裕也は後悔した。



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