隆景・官兵衛「太閤秀吉を語る3」
隆景:「ところで官兵衛。太閤殿下は我々諸将に対し、
聚楽第のみならず殿下が住まいを構えられる伏見にも
屋敷を建てるよう通達を出して来たのであるが
どのような意図を持っているのであろうか?」
官兵衛:「殿はこれまで。本宅である伏見のみならず。
大坂や聚楽第を行き来しておりましたし、
秀次様を後継者と決めておりましたので
その後継者たる関白秀次が政務を執る聚楽第に
気分がすぐれない時には会いたくない
(気ぃ使いですから)
諸将を集め、
殿は大御所兼最高実力者として
悠々自適に暮らそうと考えられていたのでありましたが。
あくまでこれは拾(秀頼)様がお生まれになられる前の話。」
「一応、伏見に殿。聚楽第に秀次様。そして大坂の地に拾様を配し、
棲み分けを図ろうとお考えになられてはおります。」
「ただ。それと諸将を伏見に集めようとしていることについての説明にはなっていませんね。」
隆景:「殿下と秀次様のどちらを選ぶのか?
の踏み絵でも踏まそうとしているのであろうか……」
官兵衛:「……わかりませぬな。こればっかりは。」
隆景:「で。殿は拾(秀頼)様と秀次様の棲み分けをどのように考えられているであるのか?」
官兵衛:「こちらも現時点でのお考え。
としか答えることは出来ないのでありますが
日本を5分割しまして
その内の4つを秀次様に譲り、
残りの1つを拾(秀頼)様に渡そうと考えられております。」
隆景:「しかしてその線引きの仕方は?」
官兵衛:「下北半島に竹島。八丈島に房総半島東の海とそれ以外に5分割したのち。
先程の4地点を秀次様に割譲され、
残った1地点を拾(秀頼)様に。
と考えられております。」
隆景:「育たない作物に業を煮やして反乱を起こさせ、
鎮圧したあとの島流し先をあらかじめ確保し、
島流しにしても自力で帰ってきそうな連中は離岸流に乗せて新大陸へ。
ソツが無いと言えばソツが無いと思われるが
……さすがに無理があるだろう。」
官兵衛:「確かに下北半島は夏の季節風の影響で作物が育ちにくい環境にはあります。
ありますが
あそこには馬がいます。
農作物は育ちませんが海があります。
その海からは
正月休み明け最初の競りで
御祝儀相場どころではない金額でマグロを買ってくれる寿司屋がいます。」
「竹島は竹島で、北と南の流れが合流する漁場が存在します。
加えてあの島は抑えておくだけで
理由はわかりませんが
何故か人気が高まります。」
「3つ目の八丈島にしましても
確かに普段は何もありません。
ありませんが時々船が流れ着きます。
その流れ着いた船の乗組員から
お酒を分けて貰える可能性があります。」
「最後の房総沖の海にしましても
船の技術が進歩しさえすれば
こちらも豊かな漁場と、
東北と都を繋ぐ新航路を産み出すことが出来ます。
あとは技術革新を待つばかり。」
「と言いましたように
4地点の全てが全て。損ばかりではございません。」
「ただ殿下は実際。どのように線引きをされるのかは謎……。」
「四国とそれ以外と考えるのが自然と言えば自然ではありますが。」
隆景:「しばらく成り行きを見守る必要はありますな……。」
官兵衛:「とりあえず全ての決定権は殿が握っている以上、
殿とのパイプを太くしておくこと自体には問題無いと思います。
注意しなければならないのが秀次様との関係。」
隆景:「実の息子可愛さに。」
官兵衛:「にならないのであれば秀次様との関係を。
でありますが
もし秀次様が引っ繰り返される事態に陥った場合は。」
隆景:「これまで築き上げて来たものの全てが水の泡となるばかりか
足枷にもなり兼ねないこととなる。」
「ところで官兵衛。秀次様の近況は如何ばかりであるのか?」
次は関白秀次について